可視光は通すが室温は上げない窓ガラス――冷房効果を高めるハイドロゲルガラス窓を開発

CREDIT: JIA FU, CHUNZAO FENG, YUTIAN LIAO, MINGRAN MAO, HUIDONG LIU & KANG LIU;

中国の武漢大学の研究チームが、室内を明るく保ったまま、室内温度を従来のガラスに比べて効果的に下げることができる新しい窓用ガラスを考案した。ハイドロゲル層と通常ガラス層を組み合わせて構成されるハイドロゲル-ガラス設計であり、可視光の透過性は従来のガラスよりやや高く、室温を高める近赤外太陽光の透過を抑制する一方で、室外への放射冷却を高める中赤外光線の放射率は高い。モデルハウスの実験では、室内を最大3.5℃低くできることを確認し、シミュレーションでは、典型的な学校建物に使用した場合、年間で2.37~10.45MJ/m2の照明および冷房エネルギーを低減できることが示された。研究成果が、2022年8月5日の『Frontiers of Optoelectronics』誌に公開されている。

建物におけるエネルギー消費は、世界のエネルギー消費全体の40%以上を占め、そのうち照明と室内冷房が大きな割合を構成しているとされる。何世紀にも渡って使用されてきた伝統的なガラス窓は、決してエネルギー効率が良いとは言えない。夏季には、近赤外太陽光がガラスによって吸収されることなくほぼ100%透過されるため、室内はこの “温室効果”もあって、冷房のためのエネルギー消費が膨大なものになる。室内を明るく保つために高い可視光透過性を維持しつつ、冷房のためのエネルギー消費を低減するために、可視光および赤外光を含めた広帯域の光波に対する吸収、反射、放射特性をどのように制御するかが、窓ガラス設計に対する大きな課題になっている。

これを実現するため研究チームは、可視光領域から中赤外領域までの広帯域に渡った研究を実施して、通常ガラスの上に数mmのハイドロゲル層をコーティングしたハイドロゲル-ガラス設計に注目した。その結果、1.7〜3.4mmのハイドロゲル層をコーティングすると1μ近傍の近赤外光領域で数10%から100%近い高い吸収率を示して、ほとんどの近赤外光の透過を遮断することが判った。また、数μ以上の中赤外光領域については、通常ガラスが高い反射率に起因して低い熱放射率84%を示すのに対して、ハイドロゲル-ガラスでは熱放射率96%を示し、室内からの放射冷却を高めることが判った。

また、0.3μmから0.8μmの可視光については、92.5%の透過性を示し、通常ガラスの場合の92.3%と比較してやや高いことも確認された。モデルハウスの実験の結果、ハイドロゲル-ガラスは通常ガラスの場合に比べて建物を最大3.5℃低く保ち、更にシミュレーションでは、ハイドロゲル-ガラスの採用によって典型的な学校建物内の照明と冷房に必要なエネルギー消費を、年間で2.37~10.45MJ/m2低減できることが判った。ハイドロゲルは入手しやすく比較的安価な材料であるとともに、容易に成形できるので実用化の可能性も高いと考えられ、室外への視界と太陽光の照明効果を失うことなく経済的に室内を冷却できると、研究チームは期待している。

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