微風でもLEDを光らせる――安価な小型風力発電デバイスを開発

シンガポールの南洋理工大学の研究チームは、微風から電力を生産し蓄電できる安価な装置を開発した。風速2m/sで3Vの電圧が発生し、最大290μWの電力を生成できる。この値は市販のセンサーデバイスを動かすのに十分な大きさで、携帯電話やパソコンにデータ送信することも可能だ。研究成果は、『Mechanical Systems and Signal Processing』の2022年9月号に公開されている。

小型のセンサーや電子機器に電力を供給することを目的とした「wind harvester(ウインド・ハーベスター)」と呼ばれるこの装置は、小型、軽量で耐久性があり、無風時にはバッテリーに蓄電した電気を使用できる。本体は耐久性の高いポリマーであるエポキシファイバー製だ。風を受ける部分は、銅やアルミニウム、テフロンなど安価な材料が使用されている。

風を受けるとプレートがストッパーに近づいたり離れたりする動的な構造をしており、これによって発生した電荷がアルミ箔から銅フィルムに流れることで電流が発生する。実験室で行った試験では、風速4m/sで40個のLEDに安定して電力を供給できた。また、センサーデバイスを起動して、室温情報を携帯電話に無線で送信することにも成功した。

研究チームは、wind harvesterがLED照明や構造物のヘルスモニタリングに利用できるとしている。装置の大きさは15×20cmで、橋やビルなどの構造物の側面に簡単に取り付けることが可能だ。雷雨を除けば平均風速が2.5m/s以下程度のシンガポール郊外のような都市環境での利用に適しているという。

研究チームは、今後さらに研究を進め、エネルギー貯蔵能力のさらなる向上と、構成材料の変更による出力向上に取り組んでいくとしている。

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