- 2022-11-27
- 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース
- Nature Communications, X線, μラジアン(1度の約2万分の1), がん検診, ディープラーニング, ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL), 学術, 爆発物, 質感(テクスチャー), 電子機器
電子機器などの内部に爆発物を隠すと、従来のX線技術では検出が難しくなる。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、ディープラーニングを活用した新しいX線技術を開発し、テスト条件下で100%の精度で爆発物を検出することに成功した。その上、このX線技術は将来的に体内の小さな腫瘍を検出できる可能性があるという。研究成果は、『Nature Communications』誌に2022年9月9日付で公開されている。
研究チームが開発したX線技術は、対象物の前に穴の空いた金属板を設置してスキャンするというものだ。金属板を通過するとX線ビームは小さなビームレットに分離し、対象物を透過する際にμラジアン(1度の約2万分の1)の角度で散乱する。この散乱を、特定の角度変化のパターンから特定の素材の質感(テクスチャー)を認識できるように訓練したAIで解析することで、異物の存在を識別する。
研究チームは、ノートパソコンやドライヤー、携帯電話などの電子機器の中にセムテックスやC4などのプラスチック爆薬を少量隠し、歯ブラシや充電器などの日用品と一緒に旅行バッグに入れて、X線検査をした。その結果、全てのケースで爆発物を正しく識別した。
ただし、今回の結果はテスト条件下によるもので、現実的にはこれほどの精度を期待するのは難しいことを研究チームは認めている。しかし、空港での手荷物検査や建物の亀裂検査、サビの検出など非破壊検査において大きな可能性を秘めている。
さらに、この技術はがん検診など医療分野にも応用できるかもしれない。例えば乳がん検診で、これまでは患者の胸郭の後ろに隠れてしまい発見できなかった初期の非常に小さな腫瘍も検出できる可能性がある。まだ腫瘍と周囲の組織のテクスチャーを識別できるかについては試験をしていないが、研究チームは可能性に期待している。