光で心臓の鼓動を制御――バッテリー不要のワイヤレスペースメーカーを開発

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Courtesy of Philipp Gutruff

アリゾナ大学の研究チームは、バッテリー不要でワイヤレスで動作するペースメーカーを開発した。従来のペースメーカーのような電気刺激ではなく、光で心臓の細胞を刺激して、心臓の鼓動を調整する。定期的なバッテリー交換が不要になり、刺激する細胞を最小限にして不快感を軽減し、装着者のQOL(生活の質)が向上すると期待される。研究結果は、2022年10月26日付けで『Science Advances』に掲載されている。

不整脈の一種、心房細動の患者は世界的にも多く、アメリカ国内では毎年45万人以上が入院し、約16万人が死亡している。心拍動を補助するペースメーカーは、一般的には手術で心臓に1本ないし2本の電極付きリードを埋め込んで使用し、不整脈を検知した場合、心拍を正常に戻すために電気的な刺激を与える。しかし、この場合「心臓内部の疼痛受容体を含めた、全ての細胞が同時に刺激を受けるため、ペーシングや除細動を苦痛にしている」と、研究チームを率いるPhilipp Gutruf助教は語る。

研究チームは、光で活性化する物質を発現させることで細胞を制御する「光遺伝学(オプトジェネティクス)」と呼ばれる技術を利用し、心拍動を生み出す心筋細胞のみをターゲットとすることで、疼痛受容体への刺激を回避しつつ、さまざまな状況に対応できるペースメーカーを開発した。

新しいペースメーカーは、薄く柔軟なフィルムでできた4枚の花弁のような形状で、青色μLEDと記録用電極を備える。4枚のフィルムは臓器の周りを包み込み、心拍動に合わせて変形できる。従来のペースメーカーはバッテリーも埋め込むため、5年から7年で交換手術を必要とするが、今回のペースメーカーは磁気共鳴カップリングを利用したワイヤレス給電で駆動するため、バッテリー交換手術が不要となる。

マイコンも搭載しているので、さまざまなアルゴリズムを入力することで、より洗練された方法で心拍を調整できるという。さらに、電気刺激で心臓の細動を取り除く場合、電気信号がデータ保存作業と干渉する可能性があるので、その間の情報を記録できないが、光システムの場合は、常に心臓の動きをモニターできる。データは、赤外線経由でアップリンクされる。

「この技術は世界中の患者の人生を楽にする可能性がある。それと同時に、科学者や医師がこの疾患を監視し、治療する方法の知識を深めるのにも役立つだろう」と、共同研究しているノースウェスタン大学のIgor Efimov教授は語る。現在は、動物モデルの実証に成功しており、今後も研究を進め、何百万人もの人々のQOL改善につなげたいとしている。

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