古紙をリチウムイオン電池の電極へとアップサイクル――紙の繊維で高耐久を実現

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シンガポールの南洋理工大学の研究チームは、包装紙や紙袋、ダンボールなどの古紙をリチウムイオン電池の負極材料に変換する技術を開発した。紙から純粋な炭素を生成する炭化プロセスにより、紙の繊維を電極にするというもので、携帯電話や医療機器、電化製品に利用する充電式電池に用いることが可能だ。研究成果は、『Additive Manufacturing』誌に2022年10月号に掲載されている。

紙を無酸素環境で加熱すると炭化が起こり、純粋な炭素と水蒸気、バイオ燃料として利用できる油分に分解される。燃焼と異なり酸素が存在しない条件で反応が進むため、二酸化炭素の排出はごくわずかだ。大量の温室効果ガスを発生させる焼却に代わる、環境に優しい古紙の処分方法だと言える。

今回研究チームは、薄いクラフト紙を数枚重ね合わせてレーザーでさまざまな形状に切断した後、1200℃に加熱して炭化、リチウムイオン電池の負極としたところ、耐久性、柔軟性、電気化学的特性に優れていることが確認された。これらの特性は、紙の繊維の配列に起因すると考えられている。実験室の試験では1200回以上の充放電が可能であり、現在用いられている携帯電話用電池の負極と比べて、少なくとも2倍の耐久性があることが示された。

またこの負極を使用した電池は、他の電池と比べて物理的ストレスにも強く、破壊エネルギーを最大5倍まで吸収した。従来のリチウムイオン電池では、物理的な衝撃により内部の炭素電極が徐々に破壊されることが、時間経過とともに電池の寿命が短くなる原因の一つだ。そのため、開発した強度の高い負極を用いれば、携帯電話から電気自動車まで幅広い用途の電池の寿命を延ばすことができるだろう。

さらに今回開発した負極の製造方法は、現在利用されている電池負極の工業的な製造方法と比べて、エネルギー消費や重金属の使用が抑えられている。負極はリチウムイオン電池全体のコストの10〜15%を占めるため、低コストの廃棄物を利用する今回の技術は、電池の製造コスト削減につながると期待される。

シンガポールでは、廃棄物のうち約20%が紙袋やダンボール、新聞、紙製包装資材などの紙ゴミだという。従来の炭素源は地中から採掘後に化学薬品や機械で処理する必要があったが、古紙を再利用できればこれらのプロセスも必要としない。また、南洋理工大学の別の研究チームは、紙ゴミの大部分を占めるクラフト紙は、綿やプラスチックよりも焼却時の地球温暖化への影響が大きく環境負荷が高いことを明らかにしている。古紙の再利用は、二酸化炭素排出を削減するだけでなく、化石燃料への依存を減らすことにもつながると言えるだろう。

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