よく伸びて自己修復能や形状記憶能を有する新素材を、廃棄物ゼロで調製することに成功 熊本大学

熊本大学は2023年8月1日、タンニン酸(TA)と超高分子量のポリエチレングリコール(PEO)を水中で混合すると、ゴム状によく伸びるゲル(TaPeO ゲル)が得られることを明らかにしたと発表した。水分を含んだ状態でTaPeO ゲルを引っ張るとよく伸び、乾燥させるとプラスチック状の素材ができる。

TAは、水中でポリエチレングリコール(PEG)と混合するだけでゲルを形成するという海外の論文に辿り着き、超高分子量のPEG(PEO)(分子量50万)で試行した。その結果、TAとPEOを水中で混合した瞬間、既報のTA/PEG ゲルとは全く性質の異なるゴム状のゲルが得られた。

このゲルを「TaPeO ゲル」と命名し、性質を追究したところ、非常にユニークな性質が明らかになった。TaPeO ゲルは、TA 水溶液と PEO 水溶液を混合し、得られた塊を回収して得る。この塊を圧縮成形し、引張試験を実施した結果、TaPeO ゲルは一定の条件で調製したゼラチンゲル、アガロースゲル、アクリルアミドゲルよりも強靭で、最大で自長の1000%とよく伸びることがわかった。また、TaPeO ゲルを切断し、切断面を接触させると再接着した。

次に、ゲルを乾燥させた乾燥 TaPeO ゲルを調製したところ、プラスチックのように固く軽量で、500gの負荷をかけても破断しなかった。一般的なプラスチックは一度破断すると元には戻らないが、乾燥 TaPeO ゲルは、破断しても、お湯に破断面を浸して接触させるだけで、破断面が視認できなくなるほど元通りになった。

乾燥TaPeO ゲルは自己修復能を有し、自己修復した乾燥 TaPeO ゲルは500gの負荷をかけても形を維持し、切断前のゲルと同等の強靭性を有する。

乾燥 TaPeO ゲルは、そのままでは固くて変形しないが、お湯に浸すと変形し、さらに室温でしばらく放置すると、その形状を固定できる。また、変形した状態でさらにお湯に浸すと、一番最初の形に戻すことができることから、形状記憶能を有することがわかった。

また、TaPeO ゲルは、調製する際に不要な上清(懸濁液)が生じるが、この上清を乾燥させると、透過性のあるフィルム(TaPeO フィルム)が得られる。このTaPeO フィルムは、伸長率1500%以上と、試験機では測定できないほどよく伸びることがわかった。

このように、TAと超高分子量PEOを用いると、全く廃棄物を出すことなく、よく伸び、自己修復能や形状記憶能を有する素材を開発できた。今後、この素材を医療素材などに応用していく。

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