イギリス政府系研究機関、独自方式の宇宙用「原子力電池」を発表

英国宇宙庁と国立原子力研究所(NNL)は2022年12月9日、アメリシウム241による宇宙用「原子力電池」の開発計画を発表した。この計画は、燃料となる放射性物質の供給を安定化し、イギリスとそのパートナーの宇宙探査活動を支援する。

宇宙用の原子力電池は「放射性同位体電力システム(RPS)」と呼ばれ、その用途は大別して2種類ある。1つは、放射性元素の崩壊で放出される熱で宇宙船の凍結を防止する用途。もう1つは、この熱を電力に変換した、船内システムへの給電用途だ。電池寿命は数十年に及び、宇宙船の運用期間を通してメンテナンス無しで利用できる。

従来、アポロ計画の宇宙船や火星探査機など過去50年のミッションでは、プルトニウム238によるRPSが運用された。しかしその生産はアメリカとロシアに限定され、供給量も限られるため、イギリスにとって独自の原子力電池の確保が急務であった。

この課題対してNNLは、原子炉の使用済み燃料から生成されるアメリシウム241が、プルトニウム238を代替できることを2009年に発見して以来、研究を続けてきた。今回の計画では4年以内に新方式のRPSを実用化し、欧州宇宙機関(ESA)の月探査機「Argonaut」への搭載を目指す。

イギリスのGeorge Freeman科学・研究・イノベーション担当大臣は今回の発表について、「アメリシウム241を用いた世界初の原子力電池により、英国にて原子力を利用するあらゆる産業への投資を促し、成長機会につなげたい」と述べている。

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UK Space Agency and NNL work on world’s first space battery powered by British fuel

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