汗の成分を検出する、多機能ファイバーを織り込んだ肌着用生地を開発 東北大学

東北大学は2023年1月16日、汗に含まれるさまざまな生体健康因子を検出できる多機能ファイバーを織り込んだ肌着用生地を開発したと発表した。

これまでさまざまな方法で布地に電子技術を組み込む方法が開発されてきた。しかしこれらは布地などに固い電子機器などを貼り付ける方法だったため、体に接地できる面積が少なく、取り扱うデータの種類も限定されていた。

今回の研究では、必要な構造や機能を持つ成形物(プリフォーム)を加熱しながら引き延ばすことで、元の構造や機能を維持しながらスケールダウンできる独自の「熱延伸プロセス」を開発。この技術を使って、髪の毛程度の細いファイバーを大量生産することに成功。さらに、多機能ファイバーの従来の機能や性能を維持しながら、電気化学センシングや液体注入の機能を組み合わせることにも成功した。

汗の中のさまざまな化学物質を電気化学的にセンシングするため、電極にカーボン複合材料を利用した。このカーボン複合材料を多機能ファイバー中に集積し、高機能センシングを実現するため、新たな多機能ファイバーを設計し、熱延伸により製作した。

また、レーザー加工技術によって、ファイバー内に集積した電気化学センシング電極などをファイバーの側面に露出させることもでき、ファイバー側面からのセンシングもできるようにした。加えて、ナトリウムや尿酸などの重要な生体健康因子を選択的かつ高感度に検出できる、ナトリウムイオノフォアなどの新たな感応膜を合成するなどのバイオセンシング機能も実現した。

これらの機能を持つ生地を肌着に用いることで、身体に密着し、しかも自然な形で汗内の生体健康因子を検出できるようになる。これを応用し、収集したデータを解析することで、人が自ら身体や精神の健康状態を管理したり、基礎疾患の追跡ができるようになるという。

今後は、脳波や心拍なども同時計測できるような多機能ファイバー生地の開発を進めると同時に、情報転送/処理を担うフレキシブル電気回路も製作し、これらを組み合わせることでヒトの心身健康状態を把握できる「スマート衣服」の実現を目指す。

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