- 2018-2-10
- 化学・素材系, 技術ニュース, 海外ニュース
- 3Dプリンティング技術, MIT Computational Fabrication Group(CFG), NLDR(Nonlinear dimensionality reduction:非線形次元削減)手法, マサチューセッツ工科大学(MIT), 色域(gamut)
マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、特殊な物理特性を示すメタマテリアルを造形するために必要な内部微細構造を選定するアルゴリズムを開発したと発表した。
近年3Dプリンティング技術を使い、複雑な内部微細構造を備えた構造物を造形することが可能になった。特にベースとなる素材とは大きく異なる物理特性を示すメタマテリアルを作り出すことができれば幅広い分野での応用が期待されるが、その設計は非常に難しく、多大な労力が必要だとされている。 そこでMIT Computational Fabrication Group(CFG)の研究チームは、物理的に実現可能な微細構造から構成可能な物理特性を計算し、必要な物理特性が得られる微細構造を自動的に計算する手法を見つけ出した。
このアルゴリズムの概要は、次のように説明されている。最初にベースとなるいくつかの素材とその機械特性を特定する。このアルゴリズムは、それらの素材を使って実現可能なすべての微細構造の組み合わせとその機械特性を自動的に計算し、これを材料特性色域(material property gamut)と定義している。
次にこの色域(gamut)の境界近傍で同等の性質を示す微細構造をNLDR(Nonlinear dimensionality reduction:非線形次元削減)手法を用いて数種のファミリーへとグルーピングし、その代表的な構造をスケルトンで表現し、テンプレート化する。そして各スケルトンを元の微細構造に一致するよう調整したパラメーターを含むビームで連結することで、目標とする物理特性を備えた構造体が作成できる。このビームのパラメーターを変化させることで、微細構造や特性の微調整も可能になる。
研究チームはアルゴリズムの実証のため2種類の元となる素材を用意し、圧縮すると横方向にも縮むという、自然界には存在しない負のポアソン比を示す構造体を構成する微細構造を算出し、3Dプリンターにより造形している。その構造体を実際に圧縮したときに生じる構造変化や得られた機械的性質が、実験結果はアルゴリズムによるシミュレーションと一致していることを示している。
研究チームは、今回の実験は弾性という特性のみに着目して実施したが、熱や電気、磁気などさまざまな物理特性を示す微細構造の特定に応用することで、望み通りの性質を備えた構造体を開発することもできると、この手法の有効性を説明している。