塩素を用いない環境にやさしい高速水殺菌法の開発

ジョージア工科大学の研究チームが、小さな電気の衝撃を利用した、環境負荷の小さい高速水殺菌法を開発した。

同研究成果は2023年1月12日、『Nature Water』誌に掲載された。

現在、飲料水確保のために水道水に使用されている塩素消毒は、有害な化学副産物を生成することが問題で、さまざまな対策が検討/実施されている。そこで、塩素消毒のような化学的な方法に代わり、物理的な殺菌法の研究が進められてきた。電解処理殺菌法がその1つだ。

従来の電解処理法(CFET)は、低温殺菌食品などに適用されている。平行板電極間に高電圧のマイクロ秒からミリ秒程度の電気パルスをかけ、細菌の細胞膜を回路のコンデンサーのように作用させて破壊し、細菌を死滅させる手法だ。しかし、水道水殺菌にCFETを用いるには、塩素消毒に比べて高価となり、高電圧を使用するため適用範囲が限られていた。また、電気パルスの時間幅を短くできれば、殺菌処理時間を短縮できるが、ナノ秒の電気パルスでは、細胞膜に十分な電荷を蓄積できず、細菌を死滅できなかった。

研究チームは、金ナノ突起構造を持つ電極を用いた局所増強電解処理法(LEEFT)を開発。水中の細菌が印加した電気パルスにどのように反応するかを顕微鏡で観察した。1cm当たり40kVの20ナノ秒パルスを10回印加したところ、95%の細菌が死滅した。

LEEFTはCEFTに比べ、殺菌に必要な電界強度を8分の1にし、処理時間を100万倍短くできる。細胞膜破壊のメカニズムをシミュレーションにより調べた結果、金ナノ突起電極先端にある細胞膜が、避雷針効果により先端の濃縮電荷から直接帯電し、瞬時に破壊され、細菌を死滅させると分かった。

LEEFTは、バッテリーや再生可能エネルギーによる駆動も容易であり、小規模な飲料水システムにとって特に魅力的である。瞬間的な殺菌法により、必要な電力が削減でき、安価で環境負荷の小さい衛生設備が期待できる。

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