新しい2D材料「MXene」を効率的に製造する手法を開発

Image by Di Wang

シカゴ大学の研究チームが、遷移金属の2D層と炭素または窒素の2D層が交互に積層配列した2次元(2D)材料である「MXene(マキシン)」を、簡便かつ迅速、そして有毒な副産物を生成することなく製造する手法を発明した。2011年に発見されたMXeneは、エネルギー貯蔵や電波遮蔽、エレクトロニクス、センサーなどに広範な応用が期待されるものの、その製造には高温化学反応と有毒なフッ酸処理を含む多くのステップを必要とし、量産化の障害になっている。研究チームの発明はこの問題を解決するものであり、応用拡大を促進するものとして期待される。研究成果が、2023年3月24日の『Science』誌に公開されている。

2004年に2D材料としてグラフェンが発見され、独特の電子的、光学的、機械的特性を持つことから大きな注目を集め、特性や応用に関する研究開発が活発に進められている。その後、フォスフォレンなどの他の単元素2D材料や、遷移金属ジカルコゲナイドなどの二元化合物2D材料が次々と発見されている。

2011年には、3層のTiと2層のCで構成され、全体として原子5個分の厚さを持つ2D材料Ti2Cが発見された。他の遷移金属原子Mと軽元素Xの組合せにも広く拡大されて、Mn+1Xnの組成式を持つMXene材料として総称されるようになった。MXene材料は、層間に様々なイオンを取り込み、導電性とイオンインターカレーション電極活性など多様な機能を発揮できるとともに、組成や表面末端基Tx、厚さなどで広汎なカスタマイズが可能なことから、エネルギー貯蔵、電磁波障害遮蔽、透明導電体、生物医学用途など多様な分野での応用が期待されている。

しかしながら通常、組成式Mn+1AXnを有する層状化合物MAX相から、フッ化物含有エッチング液(HFまたはHF/HCl)による化学処理によりA層(多くの場合Al)を脱離することで製造され、約1650℃の高温化学反応を含む多くのステップを必要とし、大量の腐食性廃棄物を発生させるなど、工業的な量産による商品化の阻害要因になっている。

研究チームは、効率的で環境に毒性をもたらさない量産手法を開発することにチャレンジし、フッ化物含有エッチング液を使用することなく、シンプルで安価な前駆体から直接MXeneを製造できる新しい化学反応を発見した。チタン金属表面におけるメタンと四塩化チタンの反応を利用して、Ti2CCl2薄膜をチタン基板と垂直方向に化学気相成長(CVD)させることに成功した。

このように生成されたMXene材料は、チタン基板から剥離され美しい花のような球晶形状を示すとともに、表面末端基(-Cl)が露出されてリチウムイオンのインターカレーション電極活性を示すことが確認された。更に、MAX相を用いる従来の手法では製造できなかった新しいMXene材料を製造できることも判った。「開発した手法は単一ステップから成り、非常にシンプルで環境に優しい。遷移金属としてチタンとジルコニウムについては実証済みだが、多くの他の組合せにも展開でき、様々な応用に向けて新しい多種のMXeneを創成する道が拓ける」と、研究チームは考えている。

関連情報

UChicago scientists discover easy way to make atomically thin metal layers for new technology | University of Chicago News

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