従来の70倍の水素を生成――チューリッヒ工科大学が新たな光触媒を開発

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近年、水素は使用時にCO2を排出しないことから、燃料電池車や水素エンジン車などに見られるように新しい燃料として注目を集めている。水素の製造法としては、石油やメタンガスなどの化石燃料から水素を分離する方法や、水を電気分解する方法などが広く知られている。しかし、前者は製造時にCO2を排出することとなり、また後者は、電気分解に大量の電力が必要となり、火力発電などの電力を使用するとやはりCO2を排出してしまうというジレンマがある。

そこで別の方法として研究が進んでいるのが、光触媒を用いてエタノールやメタノールから水素を分離する方法だ。原料にバイオエタノールなどを使用すればCO2のリサイクルが可能であり、カーボンニュートラルの思想にかなった方法と言えるだろう。

チューリッヒ工科大学の研究は、この光触媒の改良に関するもので、光を水素エネルギーに変換する効率を高めた新しい光触媒を開発し、既存の方法と比べて最大70倍の水素を生成したと学術誌「Applied Materials & Interfaces」で報告された。

光触媒の材料として最適なのは、半導体でもある二酸化チタン(TiO2)だが、二酸化チタンには太陽光の5%に過ぎない紫外線しか吸収しないという欠点があり、エネルギー産業でこの光触媒を効率的に用いるためには、より広い波長域を利用できるようにする必要があった。

そこで研究チームは、TiO2ナノ粒子に窒素をドーピングして、材料中の個別の酸素原子を窒素原子に置き換えることで、太陽光の可視領域を含むより多くの波長域を吸収できるようになることを発見した。

研究チームはパラジウムナノ粒子を担持した窒素ドープTiO2ナノ粒子ベースのエアロゲルを作成した。その結果、エアロゲルの細孔を通ってガス状の物質が拡散し、TiO2の表面とパラジウムのナノ粒子により水素に変換された。実験は5日後に終了したが、実験中、反応は常に安定していた。

産業用途ではこの反応の安定が重要な要素であることは間違いないが、最も重要なのは、貴金属のパラジウムを加えることで反応の効率が大幅に向上したことだ。実験ではTiO2ナノ粒子とパラジウムを組み合わせることで、他の代替手段に比べて最大70倍の水素を生成することができた。これは、自動車や航空機だけではなく、大規模な電力網さえも化石燃料から解放する方法として、産業レベルで水素を製造できるより高度な新しい方法となるかもしれない。

関連リンク

Gas-Phase Nitrogen Doping of Monolithic TiO2 Nanoparticle-Based Aerogels for Efficient Visible Light-Driven Photocatalytic H2 Production

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