- 2023-5-10
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- アセン類, グラフェン, スピンエレクトロニクス, ナノデバイス, ベンゼン環, ポリアセン, 光電子デバイス, 太陽電池, 奈良先端科学技術大学, 有機エレクトロニクス, 東京大学, 研究, 科学技術振興機構(JST)
東京大学と科学技術振興機構(JST)は2023年5月9日、無数のベンゼン環が直線状に連結したポリアセンの合成に成功したと発表した。幅がベンゼン環1個分となっており、最も細いグラフェンとして今後の物性解明やナノデバイスなどへの応用が期待される。
アセン類は、ベンゼン環が直線状に連結した構造を有する。ベンゼン環の数が増えると電子が広範囲にわたって移動しやすくなり、優れた導電性や発光、磁気特性を示すため、有機エレクトロニクスやスピントロニクスといった分野で注目されている。
一方で、アセン分子は長くなると溶解性や安定性が損なわれ、合成が困難となる。2020年に報告されたベンゼン環12個からなるドデカセンが、これまでで最長のものとなっている。既存の手法ではこれ以上の伸長が難しいため、新たな手法の考案が求められていた。
今回の研究では、一次元状の空間を有する多孔性金属錯体(MOF)内にポリアセンの原料となるモノマーを導入し、連結反応させることで、ポリアセンの前駆体となる高分子の合成に成功した。
単にモノマーのみを加熱するだけでは反応位置を制御できず、枝分かれ構造が形成されてしまう。一方で、MOFの細孔内ではモノマーが一次元的に配列しているため、希望する反応位置のみで連結させられる。
次に、得られた複合体を塩基で処理し、MOF骨格のみを選択的に除去して前駆体高分子を単離した。その後、加熱処理することでポリアセンを生成している。
奈良先端科学技術大学大学院の研究グループとともに、各種分光学的手法を用いてポリアセンの構造を解析したところ、ベンゼン環の平均連結個数が19、長いものでは数十個以上となっていることが示唆され、これまでの最長記録を大幅に更新している。
今回合成したポリアセンは、反応をスケールアップさせることで大量合成が可能だ。今後は、これまで明らかになっていなかったポリアセンの光や電子、磁気特性の解明に取り組む。また、最も細いグラフェンが有する特異な機能を利用し、太陽電池やナノデバイスなどに向けた展開を図る。