スマホのカメラを顕微鏡に変える世界最小のLEDの開発

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の共同研究機関であるSMART(Singapore-MIT Alliance for Research and Technology)の研究チームが、世界最小のシリコン発光ダイオード(LED)を用いたホログラフィー顕微鏡を開発した。同LEDは、スマートフォンのカメラを高解像度の顕微鏡に変換できるという。

同研究成果は、2022年10月11日「Optica」誌に、2023年2月16日「Nature Communications」誌に掲載された。

研究チームは、光の波長より小さくとも、最先端のシリコンLEDに匹敵する光強度を持つ、シリコンLEDを開発した。同LEDを光源としてCMOSに統合した、世界最小のレンズレスホログラフィー顕微鏡を製作し、スマートフォンなどの既存機器のカメラを高解像度の顕微鏡に変換できる可能性を示した。

レンズレスホログラフィーは、対物レンズなどの高価な光学部品を必要とせず、低コスト、高解像度、大視野の顕微鏡を実現する有望な技術だ。光源からの光と試料からの散乱光との相互作用がホログラムの形で記録され、計算で再構成されることで、試料面の画像が復元される。しかし、従来の再構成法では、正確な再構成のために実験装置の詳細な知識が必要であり、光学収差やノイズの存在、二重像問題などの制御が困難な変数に敏感であることが課題となっていた。

そこで研究チームは、レンズレスホログラフィーの画像を再構成するためのディープニューラルネットワークアルゴリズムを開発した。同研究で開発した手法は、光源スペクトルやビームプロファイルの事前知識なしに使用できる。

今回開発したホログラフィー顕微鏡は、植物の種子や組織サンプルなどを測定できるため、植物の病気や異常組織の検出を可能にする。ホログラフィー顕微鏡は、環境モニタリングや生物試料イメージングなどのさまざまな事例に適用されており、同研究は、オンチップデバイス化により、さらなる応用事例の拡大が期待できるとのことだ。

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