世界初、60GHz帯の電波の反射方向を制御する、IRSを用いた実証実験に成功 東北大学

東北大学大学院情報科学研究科の川本雄一准教授らの研究グループは2023年5月25日、世界で初めて、電波の反射方向を動的に制御する60GHz帯向け多素子IRS(Intelligent Reflecting Surface:知能電波反射面)を用いた実証実験に成功したと発表した。遮蔽物などによって電波が届きづらい場所にも有効な通信環境を提供できるようになる。

5G以降の無線通信では、周波数が数十~数百ギガヘルツのミリ波や数百ギガ~数テラヘルツのテラヘルツ波と呼ばれる高周波数帯の電波の利用が見込まれているが、この高周波数帯の電波は直進性が高く、遮蔽物が障害になるという弱点がある。そこでIRSと呼ばれる電波の反射板の検討が進められている。

IRSはメタ原子と呼ばれる微小な構造体を平面的に集積した反射板で、各メタ原子の反射特性を変更することで、IRSに入射した電波の反射方向を任意の方向に制御できる。こうしたことから、高周波数帯の弱点である障害物などを迂回して電波を届けられる。また、基地局やリピータに比べて安価かつ低消費電力であることや、設置場所の柔軟性が高いという特徴を持つ。

研究グループは今回、超高速無線LANに利用される60GHz帯の電波の反射方向を制御できるIRSを利用した実証実験に成功した。IRSには、縦横80素子ずつが並ぶ合計6400素子からなるIRSを利用。今回60GHz帯に対応し、かつ多素子で、外部から電波の反射方向を制御できるIRSを用いた電波反射実験に、世界で初めての成功となった。

実験では、IRSに対して正面方向から入射した電波を30度および45度方向にそれぞれ反射するよう設定を変更しながら、受信電力を計測した。その結果、高い受信電力が所望方向で計測されることを確認。IRSが指定した方向に電波を反射させていた。

実験の様子(送信機(左)と IRS(右))

なお、実証実験に使用したIRSは、東北大学とパナソニック システムネットワークス開発研究所が共同で検討を進め、パナソニック システムネットワークス開発研究所が製作した。

今後、より現実に近い環境下での実験を予定。また、実環境でこのIRSをより効率的に利用するために、変化する周辺の環境やユーザーからの要求に対して動的に反射方向などを制御する方法を開発する。これにより、次世代Wi-FiやBeyond 5Gの超高速通信を利用できるエリアの拡張に寄与する。

関連情報

世界初 60GHz帯電波の知的反射制御の実証実験に… | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

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