NASA、史上最速の通信速度200Gbpsで宇宙から地上へのレーザー通信に成功――宇宙通信における大きなマイルストーン

Credits: NASA

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、2023年4月28日、地球低軌道(LEO)上の衛星と地球との間でレーザー通信リンクを確立し、史上最速となる200ギガビット/秒(Gbps)のスループットを達成した。

現在、NASAが宇宙通信用に通常使用しているのは無線技術だ。ラジオ放送をカーラジオに送る方法や、携帯電話が中継塔と通信する方法と同様の手法で、データを送信している。しかし、NASAは月面での長期滞在や火星探査ミッションを視野に入れており、円滑なミッション運営には、より効率的な通信が不可欠だ。

レーザー通信は超高速通信が可能で、レーザーの光波の振動に情報を詰め込んで、より多くのデータを宇宙から送れるようになる。宇宙からより多くのデータを得ることは、地球の科学者が研究するデータが増えることになり、地球とは異なる世界での生活や仕事に必要となる発見をもたらすことにつながる。

今回NASAは、「Pathfinder Technology Demonstrator 3(PTD-3)」に搭載されて軌道上に運ばれた「TeraByte InfraRed Delivery(TBIRD)」システムを用いて通信を行った。

PTD-3のようなキューブサットは、小型で費用対効果が高いため、通信技術のテストに最適な宇宙船だ。PTD-3が運ぶTBIRDのペイロードは3Uで、平均的なティッシュの箱程度のサイズとなっている。PTD-3の製造と運用は米Terran Orbitalが、TBIRDのペイロードの設計と製造は米マサチューセッツ工科大学(MIT)リンカーン研究所が行った。

PTD-3は、2022年5月に米SpaceXのライドシェアミッション「Transporter-5」でケネディ宇宙センターから軌道に打ち上げられて、地球の太陽周期軌道と同期し、太陽に対して「固定」の位置に配置された。こうしてPTD-3は、毎日2回、同じ時刻に地上局の上を通過できるので、TBIRDは宇宙から地球上への通信リンクをテストできる。地上局は、南カリフォルニアにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)の施設に設けられている。

今回、TBIRDによって達成された通信速度200Gbpsという記録は、2022年6月に同じチームが実証した100Gbpsというマイルストーンを大幅に上回った。1テラバイトは高解像度(HD)動画約500時間分のデータ量に相当するが、TBIRDは地上局の上空を通過する6分間で、数テラバイトものテストデータを地球に送ることができる。

宇宙からのデータがこれほど速く地球へ送られてくる手段はこれまでなかった。宇宙から地上へデータ転送する実用的なツールとして、TBIRDがレーザー通信の実証に成功したことで、将来的にNASAのミッションはこの技術を設計段階から組み込むことができる。NASAゴダード宇宙飛行センターでTBIRDのミッションマネージャーを務めるBeth Keer氏は、この性能は宇宙での通信手段を変えることになるだろうとしている。

関連情報

NASA, Partners Achieve Fastest Space-to-Ground Laser Comms Link | NASA

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