長年の課題「アインシュタイン問題」を解く――同じ模様で並べられない非周期タイル「Spectre」を発見

2023年3月に、1種類の「タイル(平面図形)」だけを使って平面を非周期的に埋め尽くす(平面充填)ことができるタイルが、コンピューターサイエンスの研究チームにより発見された。1種類のみで平面充填できるタイルはモノタイルと呼ばれ、正方形や正三角形、正六角形などはよく知られているが、それが描く模様は周期的なものとなる。非周期的な模様を描くモノタイルの発見は数学者たちの長年の課題だった。3月に発見され帽子に似た形から「hat」と名付けられた13角形のモノタイルは画期的な発見であったが、一つ問題があった。hatは、隙間なく平面を覆うには、図形を裏返した鏡像のタイルも使う必要があるということだ。

このhatを発見した研究チームが今回、鏡像を使用しない真の非周期モノタイル「Spectre(幽霊)」を新たに発見した。

通常タイル張りをすると、繰り返しパターンが出現するか隙間ができてしまう。1960年代に、Robert Berger氏が非周期的にタイル張りできる2万426種類のタイルからなるタイルセットを発見してから、科学者たちはタイルセットのタイル数をいかに減らせるか取り組んできた。1970年代には、Roger Penrose氏がたった2種類の菱形タイル(ペンローズ・タイル)で同じパターンが現れない非周期的タイル張りができることを発見している。

それ以来、多くの数学者たちが1種類で非周期的タイル張りできるタイルを探し求めてきた。これは、ドイツ語で「1個の石」を意味する「ein stein」の発音にちなみ、「Einstein(アインシュタイン)問題」と呼ばれている。

hatは数学者が50年以上探し続けてきたEinsteinだ。しかし、鏡像を使用するという問題があったため、移動と回転のみで非周期タイル張りができるモノタイルは存在するのかという謎は残されたままだった。そこで、研究チームはさらに研究を続け、hatに類似した形状の14角形の非周期モノタイル「Spectre」を発見した。Spectreを平面に並べれば、永久に同じパターンは現れず、それは同じパターンで並べられないタイルだとも言える。研究成果は、『arXiv』に2023年5月付で公開されている。

関連情報

A chiral aperiodic monotile
Hobbyist Finds Math’s Elusive ‘Einstein’ Tile | Quanta Magazine

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る