カナダの17歳、光を使ってガン組織を見分けるデバイスを発明

カナダの12年生(16-17歳。日本の高校3年生に相当)のAaryan Harshith氏は、光でがん組織と正常組織を判別するデバイス「LightIR」を発明し、「Canada Wide Science Fair 2023」において銀賞を獲得した。

Harshith氏によると、手術はがんの主要な治療の一つだが、半分近くが失敗するという。なぜなら外科医が、目に見えない微小ながんを取り切れずに患者の体に残ってしまうからだ。取り除けなかった微小ながんは、手術が必要な腫瘍へと再び増殖するおそれがある。現状では、患者の組織検体を顕微鏡で解析し、がん細胞が患者に残っているかを判断している。しかし、この検査は結果が出るまでに数週間かかることもあり、残存がんのある患者は再手術が必要になる。

LightIRは、外科医が手術の現場で残存がんの有無を瞬時に識別し、目に見えないがん細胞を除去することができる携帯型プローブだ。がんは正常組織と比べて異常なレベルでタンパク質を発現している。そのため、がん組織と正常組織では光学特性が異なる。LightIRは、この違いを利用して両者を識別する。

この独創的な発明は、Harshith氏のがんへの関心と、当時彼が行っていた研究から思いついたという。2019年にHarshith氏はがん手術の欠点について述べた論文を見つけ、残存がんにより多くの手術が失敗している事実を知った。また同じ頃、果実の熟度を非侵襲的に推定するために「分光法」という技術の実験をしていた。分光法は、物質の化学的特性について知見を得ることができる。この2つの分野に同時に興味を持ったことで、LightIRは生まれたのだ。

Canada Wide Science Fairの時点で、LightIRは細胞実験をし、作用機序に関する米国仮特許を取得している。今後はマウスでの実験を想定しており、将来的にはヒトの乳がん手術に応用したいという。また、より大きなデータセットを用いてLightIRの予測モデルの性能を維持することなども考えている。「現実的なことを言えば、これらを達成するには10年以上かかるかもしれません。とはいえ、LightIRがどこまでできるか楽しみです」と、Harshith氏は述べている。

関連情報

LightIR: An Intraoperative Probe to Enhance Tumour Resections | ProjectBoard: YSC

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