人間の眼を模倣した、動くものを検知する光学センサーを開発――人工知能の能力を最大限に発揮

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視野の変化を知覚する人間の眼を模倣した光学センサーが開発された。米オレゴン州立大学による研究の成果で、2020年12月8日付で『Applied Physics Letters』に掲載されている。

自動運転やロボティクス、先進的な画像認識などの用途で使われる次世代の人工知能に活用しようと、脳のニューロンを模したニューロモルフィックコンピュータの研究が進んでいる。一連の命令を順次処理する従来のコンピュータとは異なり、ニューロモルフィックコンピュータは、人間の脳と同様に超並列ネットワークの機能を持つように設計されている。より人間の脳のように「考える」ニューロモルフィックコンピュータには、その性能を最大限に引き出すため、より人間の眼のように「見る」イメージセンサーが必要だと言われている。

人間の眼は非常に複雑な器官で、画像を脳へと伝える前に、網膜でかなりの量の前処理と動的圧縮が行われている。また、人間の眼は動くものを検出するのに特に適しており、静止状態のものには比較的注意を向けない。人間の光学的回路は、光強度の変化を検出する光受容体からの信号を優先する仕組みになっているのだ。

これまでにも人間の眼を模倣して網膜形態センサーが開発されてきたが、ソフトウェアや複雑なハードウェアに依存しており、従来のコンピュータ向けのものだった。それに対し、今回開発された網膜形態センサーは基本設計の一部として網膜と同様の処理をするようになっており、ニューロモルフィックコンピュータに適したものとなっている。

デジタルカメラやスマートフォンに使われている従来のセンシング技術は、順次処理に適している。2次元に配列したセンサーでピクセルごとにスキャンし、各センサーは光の強度の振幅によって信号を生成する。静的な状態では、センサーからの出力電圧はほぼ一定になる。

新しいセンサーは、静的な状態では比較的静かなままだ。照度の変化を感知すると短く鋭い信号を記録し、すぐにベースラインに戻る。これは、ペロブスカイトとして知られる種類の半導体に固有の光電的特性によって起こる。ペロブスカイトは、光のあるところに置かれると強力な電気絶縁体から強力な伝導体に変化する特性があり、次世代の低コスト太陽電池材料として近年広く研究されている。新しいセンサーでは、ペロブスカイトが厚さわずか数百ナノメートルの極薄層に塗布されており、照明下で静電容量が変化するコンデンサとして機能する。

このセンサーをしばらく暗所に置き、照明を付けると電圧にスパイクノイズが観察され、照明を付け続けていてもすぐに電圧は降下していく。このセンサーを使ってシミュレーションしてみたところ、鳥が飛んで視界に入ってきても、エサ箱に止まるとほとんど消えてしまう。エサ箱は静止しているため、見えない状態だ。そして鳥が飛び立つと再びセンサーで感知し、エサ箱も揺れることで見えるようになった。

このセンサーが物体の動きを追跡するロボットに使用されると、視野内で静止状態のものには反応しないが、移動する物体には高電圧を示す。これにより、複雑な画像処理をしなくても、移動する物体がどこにあるか、すぐにロボットが認識できるようになるという。

関連リンク

Breakthrough optical sensor mimics human eye, a key step toward better artificial intelligence

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