3次元ランダム凝縮系における光の閉じ込めは可能か?

イェール大学を中心とする国際共同研究チームが、ナノからマイクロメートルサイズの粒子からなる3次元ランダム凝縮系に光を閉じ込められることを高速計算機実験で証明した。同研究は、レーザーや光触媒などへの応用に新たな可能性を拓く発見だという。

同研究成果は2023年6月15日、「Nature Physics」誌に掲載された。

結晶格子欠陥が多い材料は、電子が束縛され、絶縁体になる。同現象は1958年に提唱され、凝縮系物理学においてアンダーソン局在として知られており、金属材料中の電子だけでなく、さまざまな凝縮系に拡張された。

しかし、3次元系における光のアンダーソン局在については、40年にわたって研究されているにもかかわらず、正確には明らかになっていなかった。さまざまな数値計算法が試されたが、大規模な系において、計算能力とメモリーが足りず、局在化の有無を示すことはできなかった。

同研究では、米Flexcomputeが開発したFDTD法(有限差分時間領域法)による、超高速シミュレーションソフトウェアTidy3Dが用いられた。同ソフトウェアにより、さまざまなランダム配置、形の大きさ、構造パラメータでの計算が可能となり、3次元ランダム凝縮系における光のアンダーソン局在が可能かどうか調べられた。

研究チームは、正確な数値計算結果を用いて、3次元系における光の局在化の可能性に関する長い論争に終止符を打つことに成功した。計算の結果、ガラスやシリコンのような誘電体材料からなる粒子の3次元ランダム凝縮系におけるアンダーソン局在は不可能であることを示した。一方で、金属球のランダム凝縮系における光のアンダーソン局在の存在を証明した。

イェール大学のHui Cao教授は、「多孔質金属における光の3次元閉じ込めは、光学非線形性や光と物質の相互作用を増強でき、レーザーや光触媒などの多くの応用が期待できます」と説明した。

関連情報

With Trapped Waves, Researchers Resolve a Longstanding Debate | Yale School of Engineering & Applied Science

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