二酸化炭素を触媒により活物質として利用した、新しいレドックスフロー電池を発表 産総研と京大

産業技術総合研究所(産総研)は2023年10月4日、京都大学と共同で、新しいレドックスフロー電池を開発したと発表した。触媒を介した二酸化炭素とギ酸塩のレドックスを利用している。

出力部と容量部が独立し、出力/容量設計の柔軟性が高いレドックスフロー電池は、大型化が容易なため、定置用大型蓄電池の候補として期待されている。しかし、活物質の選択肢は、可逆的に酸化還元する金属イオンや有機分子に限られていた。

研究グループは今回、これまで活物質に利用できなかった化合物でも、錯体触媒を介して酸化還元できれば利用できると着想し、安定かつシンプルな化合物の代表である二酸化炭素をモデル化合物として選択。触媒を介したレドックスフロー電池の実証を目指した。

実際に、負極にイリジウム触媒を介した二酸化炭素とギ酸塩のレドックス、正極にマンガンの2価と3価のレドックスを採用。レドックスフロー電池を構築し、充放電の実証に成功した。

充電時には、負極で錯体触媒を介して二酸化炭素がギ酸塩へと還元され、正極でマンガンが2価から3価へと酸化される。放電時には、負極で錯体触媒を介してギ酸塩が二酸化炭素へと酸化され、正極でマンガンが3価から2価へと還元される。充放電は最適化により、少なくとも50回可能になった。電池性能を示すクーロン効率は、安定的に90%を超え、最大で1.5 Ah L-1の比放電容量を得ている。

レドックスフロー電池の(左)充放電曲線と(右)サイクル特性

今回の開発では、特異的に錯体触媒が4価の高原子価状態で作用していることがわかった。これらの成果は、これまで活物質に利用できなった化合物でも、触媒を応用して活物質化できる可能性を示しており、活物質の選択肢を広げ、レドックスフロー電池の性能向上に向けた新しい活物質の開発につながる。

今後は、さまざまな化合物について活物質の可能性を探索する。また、レドックスフロー電池の大型化と実用化に必要な研究開発に取り組んでいく。

関連情報

産総研:触媒技術を応用した新しいレドックスフロー電池

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