ケブラーの10倍高い強度を持つマイクロチップ用素材の開発

CREDIT: SCIENCE BRUSH

オランダのデルフト工科大学の研究チームが、高強度合成繊維として有名なケブラーの10倍の引張破壊強度を持つ、高感度マイクロチップに適した材料を開発した。

同研究成果は2023年10月12日、「Advanced Materials」誌に掲載された。

現在、ナノメカニクスを用いたマイクロチップ研究が進められている。スマートフォンなどで実用化されているミクロの機械技術であるMEMS技術の次世代技術として、センサーやフォトニクス、量子素子などのさまざまな分野への応用が期待されているのだ。

ナノメカニカル共振器は、力/加速度/変位センサー技術において基本となる技術である。ナノメカニカル共振器の感度を高めるためのアプローチは、主要部分に応力を集中させる共振器のナノ構造設計にあるという。

同設計は、ナノ薄膜材料の引張破壊強度によって制約を受ける。通常、原子が完全に整列した結晶性材料が、強度の大きい材料と考えられるが、ナノ構造化は導入された結晶欠陥により引張破壊強度を低下させる。

同研究では、10GPaを超える引張破壊強度を持つ、原子が整列していないアモルファス構造のシリコン・カーバイド(SiC)薄膜を開発した。強度は、防弾チョッキに用いられる高強度繊維のケブラーの10倍以上だ。さらに、研究チームは繊細なナノ加工技術を駆使して、SiCナノ薄膜の機械特性を正確に測定できる数種類のナノメカニカル共振器を作製し、超高感度ナノメカニクス技術を開拓した。

同薄膜材料の可能性は、機械性能だけでなく、拡張性にある。アモルファスSiCは、ウェーハ・スケールで製造可能で、非常に頑丈な材料の大きなシートを提供できるという。同薄膜材料は、ナノメカニカルセンサーや太陽電池、生物学的応用、宇宙探査、その他の動的環境における強度と安定性を必要とする分野への応用に大きな可能性を持つ。

デルフト工科大学のRichard A. Norte助教は、「アモルファスSiCの出現によって、私たちは技術的可能性に満ちたマイクロチップ研究の入り口に立ったのです」と説明した。

関連情報

TU Delft researchers discover new ultra stron | EurekAlert!

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る