製図とは。求められる場面や勉強の仕方に関して

製図の手法は時代と共に進化し、さまざまな道具を使って紙に図面を描いていたのが、今ではCAD(Computer Aided Design)ソフトとパソコンがあれば、高精度かつ効率的な製図ができるようになりました。それでも、特別な勉強や練習をしなくてもいいわけではなく、正確な製図をするためには高度な知識とスキルが必要です。この記事では、製図の必要性や求められるスキル、効率的な学習方法などを解説していきます。

製図とは

製図とは、機械や電気回路、建築物などの図面を作成することをいい、ドラフター(製図台)、鉛筆、定規、コンパス、分度器などを使って手描きする方法と、CADソフトを使ってコンピュータ上で描く方法があります。代表的なのが機械製図、電気製図、建築製図などですが、作図の対象は企業によって千差万別です。それぞれ異なる規格が定められているため、ここでは機械製図について解説します。

製図は設計者の意図を正しく伝えることを目的としており、見る人によって解釈が異ならないような図面を作成する必要があります。図面には機械を製造するために必要な材料、形状、大きさ、公差、構造、工程などの情報を記入し、指示通りにつくることで正しい製品に仕上がります。

図面を参照するのは生産部だけでなく、品質保証や検査、営業部、外注先でも必要とします。設計者の間や自社内でしか通用しないルールで描いた図面は、受け取る側の認識にずれを生じさせる可能性があります。日本産業規格(JIS)で定められた製図のルールに従うことで、すべての関係者が正しい情報を共有することができるのです。

製図の必要性

製図が必要な理由は、正しく製品をつくるためには、すべての関係者に図面を使って正しい情報を伝達する必要があるからです。単純な形状であれば簡単な図や、口頭での説明で伝えることは可能かもしれませんが、実際の機械を構成する部品は複雑なため、細かな部分まで正確に伝達するのは困難なのが実情です。製図の方法が詳細に決められているJISにのっとって図面を描くことで、正確な情報伝達が可能になります。

作成した図面は、部品加工を外注する際にも利用されます。最適な加工先の選定、加工条件、納期、コストの見積もりの判断材料になります。また、自社で加工する場合や検査、品質保証、営業などにおいても、図面は加工機や検査機の選定、信頼性の確認、販売価格の算出などに役立ち、製造現場向けの組み立てや検査の手順書は、図面を基にしてつくられます。さらに、各部署の担当者が図面を確認し、押印することで承認された証拠になり、作成者、検図者、承認者の押印が揃うことで、正式な図面として認められたことになります。

製図に求められるスキル

製図に求められるスキルとして、大前提となるのが図面を正確に読み取るスキルです。そのためには、平面の図面から立体物をイメージできることに加え、図面記号を理解していなければなりません。例えば、機械加工用の図面に頻繁に使われる、寸法公差、幾何公差、表面粗さの図面記号などです。

次に、図面を描くスキルとして必要なのが、正しく分かりやすい図形を作図し、設計意図に応じて寸法や公差、各種図面記号を部品図に配置するスキルです。作図については、昔はドラフターや鉛筆、定規を使って描いていましたが、今ではCADの作図ツールを使うのが一般的です。

高精度かつ効率的な製図にはCADを使った作業は不可欠で、CADの知識や操作スキルを習得する必要があります。実務経験を積むことで習得するほか、「CAD利用技術者試験」や「CAD実務キャリア認定制度」といった資格取得の勉強でも、基礎から体系的に学ぶことができます。

機械製図は機械設計の最終工程にあたり、自社の設計業務に含まれる場合や、製図作業だけを外注する場合があります。製図も担当している機械設計エンジニアや、製図だけでなく、より高度な設計に携わりたいと考えている人は、「材料力学」「流体力学」「熱力学」「機械力学」という4大力学を中心とした機械工学の知識を身に付けておくとよいでしょう。機械が動く仕組みを設計する仕事なため、他にも、ねじやモーターといった機械要素、切削や研磨といった加工方法、JISなどの規格に関する知識など、設計業務には多くの専門知識が必要になります。

製図に関するおすすめの勉強方法

製図スキルを最も早く、確実に身に付ける方法が、実務でCADを使って作図をすることです。実務経験を積める機会に恵まれていれば、日々CADを操作することで自然に作業に慣れ、徐々にスキルが高まっていきます。業務で製図に携わる機会がなかったり、少なかったりする場合は、社内で勉強できる機会を設けてもらうよう、交渉するのもよいでしょう。

まったく経験がなく、製図に関連する仕事に就くのが難しい場合、資格の取得を目指すのも効果的な方法です。資格の試験日はあらかじめ決まっていることに加え、対策問題が用意されているため、期日を見定めた計画的な勉強ができます。未経験者から上級者まで受験できる「CAD利用技術者試験」(主催:一般社団法人コンピュータ教育振興協会)や「CAD実務キャリア認定制度」(主催:一般社団法人コステックエデュケーション)がおすすめです。

受験資格に制限がなく、実務未経験者でも自宅で筆記方式の試験を受けられるのが「2次元CAD利用技術者試験基礎」です。CADシステムや製図、図形の基礎知識が問われ、2級および1級へのステップアップを目指す人や、これから設計や製図に携わる仕事に就きたい人が受ける試験です。資格を取得したり、取得に向けた学習をしたりしていることは、面接時に好印象を与えることができます。

仕事向けのCADを学ぶ人は、充実した教材やCADソフト、パソコンが使え、効率的に学習できる専門学校や通信教育を利用する人がほとんどです。独学はコストを節約できるメリットがありますが、明確な目標を設定しないとモチベーションを保つのが難しいかもしれません。また、独学の場合は必要な教材を自分で揃えなければならず、CADソフトとパソコンは最低限必要です。有料のCADソフトは数十万円もするため、まずは基本機能のみ使える無料版を使いこなせるようにしましょう。

資格の取得を目指す人は、試験向けの公式ガイドブックや参考書などを入手して、確実に合格するためにしっかりと準備をしましょう。試験の合格のためだけではなく、実際に仕事に役立つ情報が掲載されているので、知識になるまで繰り返し読み返しましょう。時間的に余裕のない人は、費用はかかりますが、効率的に勉強できる試験対策講座の受講も検討してみましょう。

まとめ

あらゆる製品は図面を基につくられているため、製図のスキルがあれば活躍の場が広がります。未経験者でも今働いている会社やCADスクール、資格取得を目指した独学などでスキルを身に付けることは可能です。これからのスキルアップや転職を考えている方は、製図のスキルで新たな強みを手に入れましょう。

また、最先端の製品開発プロセスではCADを使った製図に加え、CAE(Computer Aided Engineering)によるシミュレーションやCAM(Computer Aided Manufacturing)による試作品の製作、実験、検証が実施されています。既に製図に携わっているエンジニアは、プラスαのスキルで自らの市場価値の向上を目指してみてはいかがでしょう。

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