NASA、史上最も遠い距離での光通信に成功――地球から月への距離の40倍

Credit: NASA/Ben Smegelsky

アメリカ航空宇宙局(NASA)は2023年11月14日、深宇宙光通信(Deep Space Optical Communications: DSOC)の実験に成功した。この実験では、地球から月への距離の40倍に相当する約1600万km離れた場所から、地上に向けて、テストデータをエンコードした近赤外線レーザーを照射。史上最も遠い距離での光通信を実証した。

DSOCは、同年10月に打ち上げられた小惑星探査機「Psyche」に搭載されている。Psycheから地上の特定の場所にレーザービームを向けるのは、レーザーポインターを使って1km以上離れた場所から動く硬貨を追跡するようなものだ。

そこでまず、カリフォルニア州にあるNASAのジェット推進研究所(JPL)の光通信望遠鏡研究所(OCTL)から、照準基準として強力なアップリンクレーザービーコンをPsycheに向けて送信。これにより、Psycheに搭載した近赤外線信号を送受信するフライトレーザー受信機が、ダウンリンクレーザーの照準を合わせるのを助けた。ダウンリンクレーザーが向けられたのはカリフォルニア工科大学パロマー天文台のヘール望遠鏡で、OCTLから南へ130kmの地点にある。

今回の実験では、短時間ではあったが、いくつかのデータを送信、受信、デコードすることができた。NASAはDSOCによるこの最初の通信を「first light」と呼んでいる。

DSOC実験では、現在宇宙船が使用している最先端の無線周波数システムの10倍から100倍のデータ伝送速度を実証することを目指している。無線通信も近赤外レーザー通信も電磁波を利用してデータを送信するが、近赤外光はデータを非常に密な波に詰め込むため、地上局がより多くのデータを受信できるようになる。

この高速なデータレート通信が可能になれば、有人およびロボットによる探査ミッションに役立つという。例えば、科学的な情報や高解像度画像、ストリーミングビデオを送信でき、火星への有人飛行などをサポートできる。

関連情報

NASA’s Deep Space Optical Comm Demo Sends, Receives First Data

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