核燃料ウランの原料として海水を利用する方法を開発

CREDIT: ADAPTED FROM ACS CENTRAL SCIENCE, 2023, DOI: 10.1021/ACSCENTSCI.3C01291

中国の東北師範大学の研究チームが、原子炉の燃料として広く使われているウランの供給源として、海水の利用に成功した。

同研究成果は2023年12月13日、「ACS Central Science」誌に掲載された。

ウラン燃料は世界各地で鉱石から抽出される。抽出されたウランは、必要なレベルに濃縮され、原子力発電所で使用されている。しかし、陸上に埋蔵されているウラン資源は限られており、原子力産業の発展にとって深刻な障害となっている。

一方、海水中のウランは約45億トンと推定され、陸上鉱床に存在するウランの約1000倍に相当する。研究チームは、海水中に存在する微小濃度のウラニルイオンからウランを捕集する電気化学手法を採用し、効率良く捕集するために表面積の大きい電極材料を開発した。

同電極には、導電性の炭素繊維で織った柔らかい布を使用し、その上に芳香族骨格からなる多孔性ポリマーをコーティングした。同ポリマーを塩酸ヒドロキシルアミンで処理して、ウラニルイオンの吸着サイトとなるアミドキシム基を付与し、よりウラニルイオンを取り込めるようにした。

研究チームは、作製した多孔性布電極を陰極に、グラファイトを陽極に使用して、合成ウラニルイオン水溶液中で電流を流し、陰極に山吹色のウラン沈殿物を確認した。

さらに、渤海で採取した海水で装置をテストした結果、24日間でコーティングされた活物質1g当たり12.6mgのウラン抽出に成功した。同手法はウラニルイオンを含む水の中に布電極を置くだけでもウランを受動的に捕集でき、電気化学を利用した場合では、自然蓄積の3倍の速度でウランを蓄積できる。

研究チームは、ウラニルイオンを捕集するために他の素材でも実験したが、処理した炭素繊維布が最も優れた性能を示したという。今後、世界の海を核燃料供給源とするために、同技術を拡大する予定だ。

※記事初出時、本文7段落目で「海水1g当たり」と記載しておりましたが、情報基となるプレスリリースの訂正が発生したため、「海水1g当たり」を「コーティングされた活物質1g当たり」と修正しております。

関連情報

Extracting uranium from seawater as another s | EurekAlert!
Self-Standing Porous Aromatic Framework Electrodes for Efficient Electrochemical Uranium Extraction | ACS Central Science

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る