牛乳にできる膜をヒントに、イオンゲル薄膜の作製技術を開発

米テキサス大学オースティン校と中国の東北林業大学、瀋陽化工大学の共同研究チームが、イオンゲル薄膜を簡単かつ迅速に作製する方法を開発した。同作製法は、温めた牛乳の表面にできる膜に着想を得ており、センサーやバッテリー、ロボット工学などへ応用できるという。

同研究成果は2023年5月11日、「Nature Synthesis」誌に掲載された。

イオンゲル膜は、フレキシブルエレクトロニクスやスマートロボット、人工知能などの幅広い分野で注目されている。特に、イオン導電性が高く、柔軟で伸縮性が高いため、ウェアラブルエレクトロニクスへの応用や固体電池の電解質としても開発が進められている。

イオン液体とは、主に有機物イオンのみから構成される液体である。イオンゲルは、合成高分子とイオン液体からなり、分子挙動の制御が難しいため、迅速で信頼できるイオンゲル膜を作製するのは困難であった。

研究チームは、セルロースやシルクフィブロイン、キトサン、グアーガムなどのバイオマス材料とイオン液体を溶媒に分散させ、表面に自己組織的に形成したイオンゲル薄膜を、ピンセットで簡単に剥がして得る手法「ディップ&ピール法」を開発した。

ディップ&ピール法では、最大で14.1mScm-1の高いイオン導電性と、130%を超える優れた伸縮性を持つイオンゲル薄膜を再現良く作製できる。同作製法は、さまざまな材料に適用でき、低コストで、形状や膜厚を簡単に調整できるという。

同研究論文の共著者であるYouhong Guo氏は、「シンプルで効果的な本薄膜作製法によって、さまざまなバイオマス材料から機能性ポリマー薄膜を迅速かつスケーラブルに製造できます」と説明した。

研究チームは今後、ウェアラブルエレクトロニクスやロボット工学、人工知能などの先端技術に対応するアプリケーションの機械特性にイオンゲル薄膜を最適化するために、同薄膜作製の調整法を検討している。

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