優れた弾性を持つ蛍光性自己修復材料を開発――二次元画像の転写にも成功 理研

理化学研究所(理研)は2024年1月22日、高い蛍光量子収率とゴム弾性を持ち、画像転写も可能な自己修復性材料を開発したと発表した。

発光特性などの機能を発現する自己修復性材料の開発は、学術的にも実用的にも非常に重要だ。従来からゲルをベースにした蛍光発光特性を示す自己修復性ポリマーが報告されているが、機械物性や自己修復性が十分ではないという課題があった。

今回の開発では、独自の希土類金属触媒を用いて、発光ユニットとしてスチリルピレン基を組み込んだモノマーとアニシルプロピレン、およびエチレンとの三元共重合を行うことで、1段階の反応のみで高い蛍光量子収率で発光し、ゴム弾性を持つ自己修復性材料を得ることに成功した。

得られた材料を構造解析すると、アニシルプロピレンとエチレンとの交互ユニットに加えて、エチレン-エチレン連鎖の他、スチリルピレンがエチレン連鎖の間に孤立した形で取り込まれた構造を持つことが分かった。

同材料は伸び率約1300%、破断強度約4メガパスカルの優れたエラストマー物性を示し、外部からの刺激やエネルギーが無くても自己修復する。アニシルプロピレンとエチレンとの交互ユニットが柔らかい成分として働き、エチレン-エチレン連鎖の硬い結晶ユニットとスチリルピレンユニットが物理的な架橋点として働くネットワーク構造を持つ。切断面をくっつけると、エチレン-エチレン連鎖の硬い結晶ユニットやスチリルピレンユニットが分子間相互作用で再凝集することにより、自己修復することが分かった。

また、同材料に特定の波長の光を照射すると、スチリルピレン基内の炭素―炭素二重結合の[2+2]環化付加が進行して蛍光特性を制御することができることも分かった。この特性を活用したフォトリソグラフィーによって、フィルム状にした材料の表面に二次元画像を転写させることにも成功した。

今回開発した自己修復性材料は、空気中以外の酸性やアルカリ性水溶液中など、さまざまな環境でも自己修復性を示す。また、1段階の反応で容易に合成可能であり、光物性なども制御可能だ。これらを生かして、さまざまな環境下で使用できる実用的な自己修復材料の開発に貢献することが期待できるという。

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タフな蛍光性自己修復材料の開発に成功 | 理化学研究所

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