直径約23nmのセラミックナノ粒子における原子位置の「ずれ」を可視化――コンデンサのさらなる小型化、高性能化に期待 九州大学

(a)BaTiO3の電子顕微鏡像ならびに(b)Ti 原子の「ずれ」の大きさと方向を示した模式図

九州大学は2019年9月3日、直径約23nmのセラミックナノ粒子における原子位置の「ずれ」を可視化することに成功したと発表した。さらに、このずれに起因して電気が溜まっていることや、粒子の上側と中程で溜まっている電気のプラスマイナスの方向が逆であることも見出したという。

コンデンサの主成分であるセラミックスが100nm以下のナノ粒子の場合、その内部に溜まっている電気の量を測定するのは難しい。しかし、チタン酸バリウム(BaTiO3)であれば、バリウム(Ba)原子とチタン(Ti)原子の位置を測り、Ba原子がなす四辺形の中心から、Ti原子の位置がどの方向にどのくらいの大きさで「ずれているか」を求めることで、溜まっている電気の量を推定できる。

そこで研究グループは、この方法を使って直径約23nmのBaTiO3ナノ粒子を観察した。通常の電子顕微鏡観察では、粒子の上側の表面に電子線の焦点を合わせて1つの観察面から画像を取得し、解析を行う。対して今回の研究では、電子線の焦点を合わせる場所を上側の表面とおよそ中程の2箇所にして、2枚の観察面から画像を取得した。これにより、粒子の上側部分と中央部分で原子の位置を別々に測定できる。

下図(a)が粒子の上側の表面に電子線の焦点を合わせて撮影した像、下図(b)が粒子中程に焦点を合わせて撮影した像だ。一見すると2枚の像に大きな違いはないように見える。しかし、下図(c)と(d)のように、これら2枚の像について解析を行ったところ、粒子上側ではTi原子がおよそ右下~下の方向に平均で約0.015nmずれていたのに対して、粒子中程ではおよそ左下方向に平均で約0.019nmずれていることが分かった。

この結果は、Ti原子の位置のずれにより、この粒子が電気を溜めていること、上側と中程で溜まっている電気のプラスマイナスの方向が異なることを示しているという。

九州大学は今後、同様の観察や解析を行うことで、より直径の小さなBaTiO3ナノ粒子の開発を進め、コンデンサの小型化・高性能化につなげていくとしている。

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