- 2024-1-29
- 化学・素材系, 技術ニュース
- AGC, Materials & Design, アルカリボロシリケート系ガラス, ガラス, ガラス群, 化学強化, 圧縮応力, 東北大学, 熱強化, 研究
東北大学は2024年1月26日、AGCと共同で、ガラスの組成を工夫することで従来の物理強化(熱強化)手法の倍以上の圧縮応力を与えられるガラス群を発見したと発表した。これによってガラス強化に必要なエネルギーを大幅に削減できる。研究成果は同年1月19日、材料分野の専門誌Materials & Designにオンライン掲載された。
東北大学とAGCの研究グループは、環境への負荷が小さく、効率的にガラスを強化できる手法を開発するため、実験器具などによく使われるアルカリボロシリケート系ガラスに注目した。その性質を詳細に調査した結果、ガラスのネットワークを構成する元素とネットワークを切る元素の比率を特定の範囲にすると、ガラス転移温度以下では強固なネットワークが保たれるのに、ガラス転移温度を超えた高温ではネットワークが切れ、構造の組み合わせが急増することを確認した。
こうした性質を利用すれば、低温域で膨張率が同じガラスでも、高温域で膨張率が巨大になるため、冷却時の大きな収縮を利用して内部応力を高められる。
さらに、この組成設計技術を用いて作ったガラスを、窓ガラスに使われるソーダライムガラスと比較したところ、開発したガラスでは圧縮応力がソーダライムガラスの2倍以上になることがわかった。
ガラスの強化方法には主に化学強化と物理強化(熱強化)がある。小型ガラスを強化するために使われる化学強化では、高温の硝酸塩融液にガラスを長時間浸漬する必要があり、温度を保つためのエネルギーや、化学物質の廃棄による環境負荷の大きさが課題になっている。
また、建築材料や車載向けの大型ガラスに用いられる物理強化(熱強化)は、ガラスを高温にした後に急速に冷却することで圧縮応力を与えるため、環境への負荷が小さいものの、圧縮応力を高める効果がやや弱く、冷却のために大きなエネルギーが必要なことが課題だった。
研究グループは今回の手法を使えば、熱強化でもより強度の高いガラスを製造でき、必要な冷却エネルギーも大幅に減らせる可能性があるとしている。
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