レーザー3Dプリントした微細ハイドロゲルモデルの無機複合化に成功 横浜国立大学

横浜国立大学の丸尾昭二教授らの研究グループは2024年2月22日、レーザー3Dプリントした微細ハイドロゲルモデルの無機複合化に成功したと発表した。ゼラチン誘導体からなる微細ハイドロゲルモデルをレーザー3Dプリンティングで造形し、無機物で表面修飾することで、有機物と無機物から構成される微細な有機-無機複合3次元モデルを構築している。

骨は主に、有機物としてコラーゲン、無機物としてカルシウムやリン酸からなるヒドロキシアパタイトから構成される有機-無機複合材料として知られている。骨の内部に位置する骨髄の微小環境では、血球、免疫細胞の元となる造血幹細胞が、間葉系幹細胞などさまざまな細胞と相互作用することで未分化状態を維持したまま増殖していることが知られている。

白血病や免疫系疾患などの治療に用いられる造血幹細胞は、生体外で機能を維持したままの効率的な増殖は困難で、造血幹細胞の培養技術の確立が求められている。研究グループは、生体本来の骨や骨髄の機能に、骨の組成や骨の内部構造が大きく関わっていると考え、骨を模倣した3次元骨モデルを開発してきたが、高精細なモデル造形が必要と考え、今回の手法を開発した。

開発した手法では、架橋性ゼラチンのレーザー3Dプリントにより、微細なハイドロゲル3次元モデルを構築し、造形した3次元モデルを無機複合化している。これにより、造形したモデルの構造を大きく変化させずに、無機物を被覆している。微細構造を有するハイドロゲルへの被膜の厚さや、ハイドロゲル内部への無機物の含有量などが制御できるため、生体に近い微小環境の実現が期待される。

実験では、ゼラチンに化学修飾を施したゼラチンメタクリレート(GelMA)に光開始剤を添加し、光照射することでレーザー3Dプリンティングを行い、任意の形状の3次元架橋GelMA(pGelMA)ハイドロゲルモデルを作製。光造形した3次元pGelMAモデルは、カルシウムイオンとリン酸イオンを含有した溶液に交互に浸漬する操作(交互浸漬)により、無機複合化した。

造形モデルの無機複合化を検証したところ、簡易的な造形モデルの線幅約600μmのpGelMA線状モデルの交互浸漬では、浸漬時間が短い条件ではライン造形物の表面近傍付近のみ、浸漬時間が長い条件ではライン造形物の内部まで無機物で修飾されることが観察された。

この検証により、モデルに対する無機複合化は、交互浸漬の浸漬時間、サイクル数の条件によって違いが出ることを実証した。それぞれの交互浸漬の条件で析出した無機物を解析したところ、全ての交互浸漬条件の析出物がヒドロキシアパタイトであることが確認されている。

pGelMAピラミッド型モデルをより複雑な立体モデルとして、レーザー3Dプリンティングにより造形し、10秒、5サイクルの条件で交互浸漬したところ、造形したピラミッドの構造を保持したまま、モデルをヒドロキシアパタイトで複合化できた。

また、間葉系幹細胞の細胞足場として、ヒドロキシアパタイト複合化したpGelMAピラミッド型モデルを応用したところ、モデル表面上での細胞の接着、伸展が見られ、骨および骨髄のモデルとして応用できる無機物表面を備えた有機-無機複合3次元モデルであることが示された。

a)ピラミッド型モデルの概略図. b)レーザー3Dプリンティングによる3次元pGelMAピラミッド型モデルの交互浸漬前後(スケールバー: 500μm)

今回、レーザー3Dプリンティング技術と無機複合化法を組み合わせ、有機物と無機物が複合化した3次元骨モデルを構築する手法の開発に成功した。今後、開発した手法を用いて、さらに高精細な有機-無機複合3次元モデルを造形し、再生医療研究に貢献する3次元骨モデルの構築を目指す。

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