マサチューセッツ大、疾患を嗅ぎ分けるナノワイヤー製「電子鼻」を開発

マサチューセッツ大学アマースト校の研究チームは、特定の化学物質を選択的に識別できる、髪の毛の1万分の1の細さのナノワイヤーを発明したと発表した。このナノワイヤーは、バクテリアによって増産が可能で生分解性があり、無機ナノワイヤーよりもはるかに環境に優しい。そして喘息や腎臓病などの疾病を持つ人の呼気などに含まれる化学物質を「嗅ぐ」ように設計することができる。このように特別に設計された数千本のワイヤーを、小さなウェアラブルセンサー上に植毛することで、潜在的な合併症をモニタリングする前例のないツールとすることができる。研究成果は、2023年4月15日発刊予定の科学誌『Biosensors and Bioelectronics』に掲載される。

このワイヤーの開発は、「Geobacter sulfurreducens(ゲオバクター・スルフレデュセンス)」という細菌から始まった。研究チームは以前、この細菌を使って、汗から長時間連続的に発電できるバイオフィルムを作成した。この細菌は、導電性の小さなナノワイヤーを成長させるという驚くべき能力をもっている。

しかし、ゲオバクター・スルフレデュセンスは扱いにくい細菌で、増殖に特定の条件が必要なため、大規模な利用は困難だ。そこで研究チームは、ゲオバクター・スルフレデュセンスからピリンと呼ばれるナノワイヤー遺伝子を取り出して、腎臓病の人の呼気に多く含まれるアンモニアに非常に敏感な「DLESFL」と呼ばれる特定のペプチドを含むように設計し、最もありふれた細菌の1つである大腸菌のDNAと継ぎ合わせた。こうして大腸菌で生成できるようになったアンモニア感受性を高めたナノワイヤーを採取し、センサーに組み込んだ。

研究チームによれば、対象をアンモニアと腎臓病だけに限定する必要はなく、目的の分子に特異に結合するユニークなペプチドを設計することが可能だという。体内から放出されるトレーサー分子で特定の疾病に特異なものが特定できれば、その化学物質に対応するナノワイヤーを組み込んだセンサーによって健康状態をモニターできるようになる。

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