いわゆるファインマン・スプリンクラー問題に答えを出す実験結果――数十年来の物理学の謎が明らかに

Credit : NYU's Applied Mathematics Laboratory

通常のスプリンクラーでは装置の中から外へ水が流れ出るが、逆に装置の外から中へと水が流れ込むスプリンクラーはどのように機能するのかという、いわゆる「ファインマン・スプリンクラー」(あるいは「リバース(逆)スプリンクラー」とも呼ばれる)問題に対する答えが、実験によって判明した。この研究は米ニューヨーク大学を中心とした研究チームによるもので、2024年1月26日付で『Physical Review Letters』に掲載された。

ファインマン・スプリンクラー問題とは、典型的には、水のような流体がS字型の管(アーム)から排出されるときに回転するタイプのスプリンクラーについての思考実験として定義されるものだ。この問題は、流体がS字型のアームを通して吸い込まれた場合に何が起こるのかを問う。

研究チームは、実験室での精密な実験と、リバーススプリンクラーがどのように作動するかを説明する数理モデリングを組み合わせることで、この問題を解決した。リバーススプリンクラーは、装置内部に水を取り込む際に、装置外部へ水を排出するときとは反対方向に回転することがわかったのだ。

研究チームは、まずスプリンクラー装置を特別仕様で作製し、制御可能な速度で水の流入と流出を調節できる装置の中で水に沈めた。流れに応じて装置が自由に回転するよう、新しいタイプの超低摩擦ベアリングも作製した。

また、スプリンクラー装置の外部や内部での水の流れ方や、水がスプリンクラーの中を通過する際の動きを観察し測定できるようにスプリンクラーを設計した。さらに、リバーススプリンクラーでの過程経過を観察しやすくするため、水にフルオレセイン蛍光色素と微粒子を加えてレーザー照射し、高速度カメラでその流れを撮影した。

その結果、リバーススプリンクラーは、従来のスプリンクラーより非常に遅い約50分の1の速度で回転するが、そのメカニズムは基本的に従来のスプリンクラーと同様であることがわかった。順方向に回転する従来のスプリンクラーは、アームから噴出する水を動力とする回転ロケットのような動きをするが、リバーススプリンクラーは「裏返しのロケット」として機能し、アームが合流するチャンバーの内部で噴流が起こる。

研究チームは、2つの内部噴流が衝突はするものの、真正面から衝突するわけではないことを発見した。また、数理モデルにより、この微妙な効果がスプリンクラーを逆方向に回転させる力をどのように生み出すかを示した。

この研究は、流体物理学において最も古く難解な問題の1つに答えるものだ。研究チームは、構造物内部を流れる流体が運動を引き起こす可能性がある状況について、理解がより深まったとし、この発見は、大気中の風や、海と川の波や流れなど、気候に悪影響を及ぼさないエネルギー源を利用する上で有益な可能性があると考えている。また、今回の実験で使用した手法は、空気や水の流れに反応する装置など多くの実用的な用途にも役立つと考えられるという。

関連情報

How Does a “Reverse Sprinkler” Work? Researchers Solve Decades-Old Physics Puzzle
Phys. Rev. Lett. 132, 044003 (2024) – Centrifugal Flows Drive Reverse Rotation of Feynman’s Sprinkler

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