- 2024-3-7
- 技術ニュース, 電気・電子系
- LiB, LiMn酸化物, リチウムイオン二次電池, リチウムマンガン酸化物, 大型放射光施設「SPring-8」, 正極材料, 無秩序岩塩型, 無秩序岩塩型LiMn酸化物, 研究, 豊田中央研究所, 非金属元素
豊田中央研究所は2024年3月6日、リチウムイオン二次電池(LiB)の正極材料として資源の持続可能性のリスクがあるコバルト、ニッケルを使用せずに、非金属元素の導入によって性能を向上させたことを発表した。非金属のホウ素やリンを導入することで、長寿命化と高容量化の効果を実証している。
自動車の電動化への進展に伴い、駆動用のLiBは、高性能化やコストの低減、安定供給が期待されている。マンガン(Mn)系材料は、金属資源の持続可能性のリスクが少ない正極材料の1つだが、一般的なリチウムマンガン(LiMn)酸化物は、コバルト、ニッケルを正極材料とした高性能電池に比べ、容量が低く寿命が短い。そこで研究チームは、結晶内部の微細構造を制御することで、Liイオンの通り道が出現し、かつ高容量が得られる無秩序岩塩型のLiMn酸化物に着目した。
研究では、無秩序岩塩型LiMn酸化物の微細構造制御として、小さな非金属元素(ホウ素、リンなど)を格子間のすき間に導入した。その結果、ホウ素は微細構造が安定化して、繰り返し使用後にも高容量が維持される「長寿命化」の効果があることがわかった。また、低濃度のリンは格子間のすき間が制御され、リチウムイオンの移動、吸蔵が増えて高エネルギー密度化する「高容量化」の効果が明らかになった。
さらに、正極材料の微細構造変化を大型放射光施設「SPring-8」豊田ビームラインで解明し、構造制御のための非金属元素導入の指針を提案した。正極にこれら新材料を用いた小型のラミネート型LiBを作製し、非金属元素導入による長寿命化、高容量化を実証した。
今回の研究で、非金属元素(ホウ素、リン)の導入が、正極材料の長寿命化、高容量化に有用だと明らかになった。さらに、材料設計指針を提案した。また、非金属元素を導入した無秩序岩塩型LiMn酸化物のLiBを作製し、その性能向上を実証した。
正極材料に用いる金属元素は、単一(モノメタル)だと容易に分別でき、LiBのリサイクル促進につながる。今回検証した正極材料は、Mn系のみで構成されているため、コバルトとニッケルの不使用、長寿命と高容量の両立に加え、リサイクルしやすい特長を持つLiBの実現が期待される。
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