名古屋工業大学は2024年4月12日、日本ガイシとの共同研究で、フッ化物材料Li3AlF6のLi+伝導度の向上に成功し、安定に動作する全固体リチウムイオン電池を開発したと発表した。大気中でも安全に使え、全固体リチウムイオン電池の高性能化や量産化につながる成果だとしている。研究成果は2024年3月14日、ACS Applied Energy Materialsに掲載された。
研究グループは全固体リチウムイオン電池の電解質として、フッ化物材料Li3AlF6に着目した。Li3AlF6は大気中で安定し、発火することもないため、リチウムイオン電池の材料として30年ほど前から候補の一つとなっていた。しかし、Li+伝導度が低く、電池の内部抵抗低減が課題だった。
このため、研究グループは試料を微粉末に粉砕するボールミリングという手法を使ってLi3AlF6とLi2SiF6を混合し、Li+の伝導度を3×10-5S/cmにまで向上させることに成功した。また、この混合物Li3AlF6-Li2SiF6は、ほどよく柔らかく、室温でプレス成型するだけで正極-負極と緻密な界面を構築できることもわかった。
こうしたことから、ドライルーム内で室温プレス成型を使い、全固体リチウムイオン電池を作製できた。また、Li3AlF6-Li2SiF6は大気中に24時間放置しても分解せず、高いLi+伝導度を維持できる。そのため将来の電池の量産化への応用も期待できるとしている。
研究グループでは、今回開発した全固体リチウムイオン電池の実用化に向け、Li+伝導度が向上したメカニズムの解明に取り組むとともに、さらなる伝導度の向上を図る。
関連情報
フッ化物固体電解質を用いた全固体リチウムイオン電池を開発 ―安全で安定した充放電ができる全固体リチウムイオン電池の量産化へ大きな一歩―|国立大学法人名古屋工業大学