- 2024-5-15
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- アンモニア, ウェストバージニア大学, エチレン, エネルギー省(DOE), マイクロ波, メタン, 再生可能エネルギー, 化学反応装置, 化石燃料, 学術, 電磁放射熱
ウェストバージニア大学は2024年2月15日、産業廃熱と炭素排出の削減につながる新型の化学反応装置を研究する目的で、アメリカのエネルギー省(DOE)から300万ドル(約4億6900万円)の資金を得たことを明らかにした。
同大学が研究を進める化学反応装置は、マイクロ波から直接熱を生む。同じ装置からエチレンとアンモニアを同時に生産し、エネルギー消費を最大85%削減する可能性がある。
産業界においては、水分の除去、蒸気の発生、プラスチックの溶融、金属加工など、さまざまな場面で熱が必要になる。現状は化石燃料を燃やすことで熱を得ているが、二酸化炭素の排出を伴うことが問題となっている。DOEによると、アメリカにおいては、産業廃熱による炭素排出が全体の約9%を占めるという。
従来の手法では、化石燃料を燃焼させるなどして生み出された熱は、反応器の壁やコイル、触媒などを通過する際にエネルギーを失う。一方、新型のマイクロ波反応装置は、マイクロ波の電磁放射熱を使って化学反応を促す。マイクロ波の出力と周波数を変動させることで熱の供給をより正確に制御できるようになり、メタン合成のための加熱とアンモニア生成のための冷却を素早く切り替えることができる。アンモニアの生成に使う水素を合成メタンから得ることで、水素を生産する工程が不要になる。また、反応器内の測定ツールでリアルタイムにデータを収集し、運用を最適化するために機械学習を利用しているという。
マイクロ波反応装置には別の利点もある。従来の反応装置では安定した電力供給が必須になるため、太陽光や風力などの不安定な再生可能エネルギーを使った稼働は困難だったが、マイクロ波反応装置は数分以内に起動/停止できるため、再生可能エネルギーを利用して運転できる。
研究チームは反応装置の設計について研究室で検証を進めており、3年の研究期間中に実証試験も成功させたいと述べた。