ハロゲン多電子移動に基づく高エネルギー密度の水系二次電池を開発

中国科学院の大連化学物理研究所(DICP)の研究チームが、臭素とヨウ素の多電子移動を利用し、電解液に水溶液を使用する水系二次電池の高エネルギー密度化に成功した。

同研究成果は2024年4月23日、「Nature Energy」誌に掲載された。

電気自動車や携帯機器、再生エネルギーの蓄電などの用途で二次電池の需要が高まっている。現在、主流の非水系リチウムイオン二次電池は、高いエネルギー密度を持つ一方で、リチウム資源の高価格化と可燃性の有機電解質による発火の危険性という問題を抱える。

電解質水溶液を使用する水系二次電池は、低コストと環境保全性、高イオン伝導性、不燃性という特徴を持つため、リチウムイオン電池の代替技術として期待される。しかし、水の溶解度と電池電圧が低いため、水系二次電池のエネルギー密度は一般的に低い。

そこで、研究チームは、ヨウ素イオンと臭素イオンを含む高濃度混合ハロゲン水溶液を電解質に使用し、ヨウ素イオンとヨウ素酸間の多電子移動を伴う電気化学反応を利用した水系二次電池を開発した。

電気化学反応中に生じる中間体の臭化物種が反応ポテンシャルを緩和し、反応速度を加速することが分かった。1L当たり6モルのヨウ素イオンを含む電解液を使用した実験では、30モル以上の電子移動と840Ah/Lの高比容量を達成した。さらに、同正極とカドミウム負極を組み合わせた二次電池は、1200Wh/Lを超える高エネルギー密度を達成した。また、研究チームは、in-situ光学顕微鏡やラマン分光法などを使用し、多電子移動過程を確認した。

DICPのXianfeng Li教授は、「本研究は、高エネルギー密度の水系二次電池の設計に新たなアイデアを提供し、電力電池分野での水系二次電池の適用範囲を拡大する可能性があります」と説明した。

関連情報

Researchers Develop High-energy-density Aqueous Battery Based on Halogen Multielectron Transfer—-Chinese Academy of Sciences

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