再生可能エネルギーを低コストで貯蔵――イスラエルのBaroMarが海底設置型圧縮空気貯蔵システムを開発

イスラエルのスタートアップ企業BaroMarが、圧縮空気を長期間安定的に貯蔵できるタンクを深度700mまでの海底に設置する、コスト効率の高い圧縮空気エネルギー貯蔵システム(CAES)を開発している。深海における静水圧を利用することで、圧縮空気を閉じ込めるのに必要なタンク構造強度を大幅に軽減でき、また従来技術によるタンク製作や海底設置、運転維持が可能で、総合的なエネルギー貯蔵コストを著しく低減できるとしている。気象条件による変動性の高い再生可能電力を圧縮空気エネルギーとして貯蔵し、必要に応じて圧縮空気でタービンを回転させて発電、電力として取り出すものだ。再生可能エネルギーの持続性を高めるシステムとして、技術評価を目的にキプロスに4MWhのパイロットプラントを建設するプロジェクトを進めている。

風力や太陽光による再生可能エネルギー活用プロジェクトが大規模に展開されつつあるが、気象条件による変動性が高いことから、長期間に渡り安定的にエネルギー貯蔵できる技術が模索されている。リチウムイオン電池は、エレクトロニクスや電気自動車などの用途には大いに役立つが、大規模かつ長期間のエネルギー貯蔵には不向きだ。

そこで、空気の圧縮というシンプルな仕組みで大きなエネルギーを貯蔵できる技術としてCAESが期待されるようになり、既にドイツやイタリア、アメリカなどで実績がある。だが、CAESには極めて高い気密性や耐圧性を有する地下貯槽タンクの建設が必須条件で、地質条件や環境条例などによる制約があったり、設備規模が大きくなることで建設コストが高くなったりという課題があり、本格的な実用化には至っていない。

BaroMarは、この制約を回避する手法として、タンク内部の圧縮空気に対する対抗圧力として深海における静水圧を利用することを考案した。圧縮空気貯蔵タンクを海中に沈めて海底に設置し、深海における高い静水圧をタンク構造の耐圧として利用することにより、非常に安価に貯蔵タンクを製作できると考えている。

鋼とコンクリート製の貯蔵タンクには、透水型のシンプルな開閉弁が装備され、海底に設置されると最初は高静水圧の海水で満たされるが、地上からコンプレッサーによって空気を圧送すると海水が排出され、700m の深海では静水圧に相当する70気圧まで加圧された圧縮空気が貯蔵される。また、浮力を相殺するために、タンク上部には必要重量の岩石を積載したケージが載せられる。

地上でエネルギーを回収する場合は、熱回収システムおよび軸流タービンにより発電機を駆動して発電するが、システムとしての総合的な効率は70%と推定している。同社の推定によれば、従来技術を用いてタンク製作や海底設置、運転維持が容易なことから、エネルギー単位あたりの平均化貯蔵コストは1MWhあたり 100ドル(約1万6000円)であり、比較技術よりも約30ドル(約5000円)安価だ。現在、キプロスに4MWhのパイロットプラントを建設中であり、海底設置型CAESの有効性を実証する予定だ。

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