大阪公立大学と東北大学は2023年12月1日、両大学などの研究グループがダイヤモンドを基板に用いた窒化ガリウム(GaN)トランジスタを作製し、炭化ケイ素(SiC)基板上に作製した同一形状のトランジスタに比べて、放熱性を2倍以上高めることに成功したと発表した。5G通信基地局や気象レーダー、衛星通信分野にとどまらず、これまで真空管が使われてきたマイクロ波加熱やプラズマ加工分野への応用が期待される。研究成果は2023年11月15日、国際学術誌「Small」に掲載された。
GaNトランジスタは高出力、高周波半導体素子として、モバイルデータ通信の基地局や人工衛星通信システムなどに用いられているが、トランジスタは動作時の発熱が性能や寿命の低下の原因となるため、下層となる基板に放熱性の高い材料を用いる必要がある。しかし、一般的に普及しているSiCを基板にしたトランジスタでは動作時の放熱性が不十分だった。
研究グループはSi基板上に厚さ3µmのGaN層と、厚さ1µmの炭化ケイ素(3C-SiC)バッファ層を生成した後、Si基板から2層を剥離。これらを表面活性化接合法でダイヤモンド基板上に接合し、約1インチのGaNトランジスタを作製した。高品質な炭化ケイ素薄膜を用いることで、1,100℃の熱処理を行った後でも接合界面に膜剥離が起こらず、高品質なヘテロ接合界面を得ることができた。
この方法で作製したダイヤモンド基板上GaNトランジスタの放熱性を検証するため、SiC基板上に作製した同一形状のトランジスタと比較したところ、ダイヤモンド基板上のトランジスタは、SiC基板上のものに比べ、放熱性が2.3倍向上することを確認した。また、他の先行研究で作製されたダイヤモンド基板上のトランジスタよりも高い放熱性を持っており、トランジスタ特性の大幅な改善に成功した。
研究グループでは、このGaNトランジスタを用いれば、システムの小型化や冷却機構の簡素化が可能となり、CO2排出量の大幅な削減も可能になるとしている。今後、ダイヤモンド基板を用いた大面積のGaNトランジスタが実現すれば、5G通信基地局や気象レーダー、衛星通信分野などでの活用も期待できる。