低温温水から氷スラリーの連続製造に成功――「熱リサイクルパッケージ」を開発 八戸工業大学ら

八戸工業大学は2024年5月29日、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発」により、東京電機大学、高砂熱学工業と共同で、温水から氷点下冷熱を製造する吸収冷凍機と氷スラリー製造機を組み合わせた「熱リサイクルパッケージ(冷熱出力3kW)」を発表した。低温温水から、氷片と水が混合した流動体「氷スラリー」の連続製造に成功している。

今回の委託事業では、廃プラスチックごみに対して、高度資源循環と環境負荷低減が両立できる技術を開発している。その中で、焼却処分しかできない廃プラスチックを対象にした高効率エネルギー回収・利用技術(ER)では、焼却場での熱エネルギー回収強化を目的に、伝熱管表面に灰が固着し、熱エネルギー回収の妨げとなる状態(ファウリング)を抑制する伝熱管表面材料の開発、低温域まで排ガスの熱エネルギーを回収して有効利用するプロセス開発(ER低温側)を進めている。

研究では、ER低温側の技術開発により、回収した熱エネルギーで氷スラリーを製造する熱リサイクルパッケージを開発し、連続稼働を実証した。これまで、排熱から回収した熱エネルギーを使える期間は暖房利用などに限られていたが、熱エネルギーを冷熱に換えることで、輸送時冷蔵保冷剤など年間を通じた需要に対応できる。氷スラリーは、氷の特徴である高い蓄熱密度とポンプ輸送ができる流動体の性質を合わせ持つため、使いやすく、冷熱輸送の効率化が期待される。

パッケージは、従来型の吸収冷凍機、氷点下冷熱を製造する吸収冷凍機、氷スラリー製造機で構成される。今回開発した吸収冷凍機と氷スラリー製造機を連結し、回収した熱エネルギーの有効利用プロセスを開発した。廃プラスチックなどを燃焼によってエネルギー回収する際に、排熱として捨てられている低温の未利用熱エネルギーを氷スラリーに変換する。

吸収冷凍機は、蒸発、吸収、再生、凝縮の機能を持つ機器を連結しており、蒸発器と凝縮器にある液体は冷媒、吸収器と再生器にある液体は作動液と呼ばれている。液体の蒸発促進のために減圧された状態で密閉されているため、蒸気を吸収する作動液(臭化リチウムなど塩の水溶液)を使用し、作動液に蒸気を吸収させ、元の液体に戻す。

作動液は、吸収した蒸気で徐々に薄められ、吸収能力を失うことから、濃度調整が必要になるため、温水などの低温排熱エネルギーを、作動液から液体を蒸発させるエネルギーとして供給する。濃度調整された作動液は、蒸発器の冷媒蒸気を吸収し続け、冷熱も連続的に製造される。

氷点下冷熱を製造する吸収冷凍機

しかし、気化熱を利用した吸収冷凍機では、従来の冷媒で製氷できる低温を得られなかったため、新たに凝固しにくく、安全性が高い条件を満たす冷媒を開発した。また、開発した吸収冷凍機で作った冷熱による、氷スラリーの製造も実証。通常の氷はパイプ輸送が困難だが、氷スラリーにすることでパイプ輸送できる。配管の曲がりやつなぎ目でも氷が滞らない実用条件を得ている。

開発は、八戸工業大学が氷点下冷熱を製造する吸収冷凍機、東京電機大学、高砂熱学工業が氷スラリー製造機を担当した。NEDO、八戸工業大学、東京電機大学、高砂熱学工業は今後、開発したパッケージを、工場などから排出される低温の未利用熱と、工業、運輸、農林水産といった分野を連携するハブとして活用する。

関連情報

温水を使用した氷スラリー製造の連続化に成功― 未利用熱を活用し、高い熱利用効率を実現 ― – 八戸工業大学

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