再生可能エネルギーを貯蔵しながら二酸化炭素を回収する新しい電池――最大10時間の蓄電が可能

Credit: Andy Sproles/ORNL, U.S. Dept. of Energy

米エネルギー省(DOE)所管のオークリッジ国立研究所(ORNL)は、2024年5月15日、再生可能エネルギーを貯蔵しながら大気中の二酸化炭素(CO2)を回収する、電池技術を開発していると発表した。

CO2電池の研究はこれまでほとんど行われておらず、これまでに試されたアプローチは可逆的な金属-CO2反応に依存しており、この反応はCO2を再生成するため大気中に温室効果ガスを放出し続ける。さらに、固体の放電生成物は電極表面に付着しやすく、電池性能を低下させるという問題もあった。

それに対しORNLの研究チームは、CO2を他の製品に利用できる可能性がある固体に変換するという、新しいCO2電池を2種類開発してテストした。このタイプの電池は、ソーラーパネルや風力タービンによって発電される再生可能エネルギーを貯蔵し、風力や太陽光が利用できないときに貯蔵したエネルギーを利用する。エネルギーを利用するには電気化学反応が必要で、その際に産業排ガスからCO2を回収して付加価値のある製品に変換する。

2種類の新しい電池のうち1つは、触媒に安価な鉄とニッケルを使ってCO2と塩水のナトリウムを結合させるもので、もう1つはCO2ガスとアルミニウムを結合させるものだ。どちらのアプローチも豊富な材料と塩水状の液体電解質を使用しており、電極が水中で安定しているため、既存の技術よりも安全だという。

最初に開発されたナトリウム-二酸化炭素(Na-CO2)電池は、ウェットチャンバーとドライチャンバーの間を固体イオン電導体で隔て、それぞれのチャンバーに電極を設置する必要があった。しかし、チャンバー間の境界はイオンの移動を遅らせ、電池の効率を低下させる。特に、長期間使用すると電極表面に膜が形成され、最終的に電池が失活するという重大な問題があった。

そこで、研究チームは非常に特殊な顕微鏡とX線技術を使って電池セルを詳細に調べ、この膜がどのように形成されるのかを研究した。その結果、充放電サイクルの操作を変更するだけで、電池を再活性化したり、まったく不活性化しないようにしたりすることができることが分かった。充電と放電のパルスを不均一にすることで、電極に膜が堆積しないようにすることができた。

次に、研究チームはアルミニウム-二酸化炭素(Al-CO2)電池の設計に焦点を当てた。さまざまな電解液と3つの合成方法の最適な組み合わせを見つけるために実験をし、その結果10時間分以上の電力を貯蔵できる電池が完成した。これは長時間の安定稼働が可能な初のAl-CO2電池だという。

試験により、このAl-CO2電池は、容量が低下することなく600時間以上動作可能だと分かった。さらに、両電極を同じ溶液に入れて単一チャンバー内で作動するように設計できるため、イオンの移動に対する障壁がないという利点に加え、Na-CO2電池の約2倍のCO2を回収できる。

ORNLが開発したこれらのCO2電池は二酸化炭素を放出せず、その代わりに副生成物の炭酸塩が液体電解質中に溶解する。炭酸塩は液体を濃縮し続けて電池性能を向上させるが、電池の動作を中断することなく容器の底からろ過することもできる。この副生成物は製薬業界やセメント産業で使用できるため、副生成物をより多く生成するよう電池の設計を調整することも可能だ。放出される気体は酸素と水素だけで、気候変動に影響を与えることはなく、エネルギーや燃料を生産するために回収することもできる。

Al-CO2電池の課題は規模を拡大できるようにすることで、動作寿命を延ばしてより効率的にCO2を回収することも目指す。Na-CO2電池に関しては、電池のチャンバー分離用に使う、非常に微細かつ高密度で機械的に安定したセラミック膜の開発に注力する予定だ。

関連情報

Carbon-capture batteries developed to store renewable energy, help climate | ORNL

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