水素をエネルギーとする鉄鋼商業生産の実証に成功――二酸化炭素の排出を大幅に削減

特殊鋼メーカーOvako AB社は、液化ガスなどの化石燃料の代わりに、水素ガスを活用する可能性について実証した。

スウェーデンの鉄鋼メーカーOvako ABは、鉄鋼の商業生産において史上初めて、液化ガスなどの化石燃料の代わりに、水素ガスを活用する可能性についてチャレンジした。その結果、水素ガスを簡便かつ柔軟に使用でき、鉄鋼製品の特性に対する悪影響を生じることなく、炭酸ガス排出量を大幅に削減できることを確認した。

鉄鋼業における炭酸ガス排出は、例えば日本では総排出量全体の13%に達し、産業部門の中で最も高い比率を占めているもののひとつだ。高炉や転炉などの上流工程から、圧延や熱処理など下流工程まで、鉄鋼プロセス全般で炭酸ガスを排出している。特に、原料鉄鉱石を還元する高炉においては、大量のコークスを用いて炭素による還元を行っているため、その過程で発生する炭酸ガスは鉄鋼業全体でも非常に大きな割合を占めている。そのようなことから、以前から水素による鉄鋼石還元技術が検討され、日本においても国家プロジェクトとして研究が進められている。

日本製鉄の子会社である特殊鋼メーカーOvako ABは、これまでに、スクラップを溶融して製品素材を製造する電気アーク炉において、再生可能エネルギーを使用して炭酸ガス排出量を大幅に削減することに成功している。一方、圧延プラントにおける炉加熱に関しては、依然として炭酸ガスを発生する液化ガスを用いている。このほど、産業用ガス分野の最大手であるLInde Gas ABと共同で、Hofors工場の圧延プラントにおける炉加熱に、水素ガスを活用するフルスケールのトライアルを実施し、可能性の実証に成功した。水素ガスの燃焼は水蒸気しか排出しないので、環境に対するインパクトが大きく、「このトライアルは、他の圧延プラントにも全面展開でき、我々の推定によれば、初期的な投資だけでも、毎年2万トンの炭酸ガス削減効果が期待できる」と、Ovako ABは説明している。

しかしながら、現状では水素ガスの95%が、天然ガスと石炭を原料として生産されており、水素ガス製造過程で不可避的に炭酸ガスを発生する。現状、1トンの水素製造に対して、10トン前後の炭酸ガスが排出されている。これを回避する方法として、再生産可能なエネルギーによる水の電気分解によって水素を製造する手法、水素製造過程で排出される炭酸ガスを捕捉して貯蔵する手法などが提案されている。だが、このような水素製造技術または炭酸ガス固定化技術は、量的に限界があるとともに高コストだ。Ovako ABは、鉄鋼業におけるクリーンな水素エネルギー活用技術への転換のためには、新しい水素関連技術に関する財政支援やインフラが必要だとしている。

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