柔軟性のある電子部品を実用化する、伸縮できるリチウムイオン電池を開発

米ACS Energy Letters誌は2024年7月17日、5000%伸縮できる電解質層を含む、完全に伸縮可能なリチウムイオン電池に関する研究成果の掲載を発表した。論文の筆頭著者は中国の南京郵電大学の研究者だ。この技術は、ウェアラブルヘルスモニターなど、使用時に曲げたり伸ばしたりする電子機器で利用できると期待されている。

類似研究の大半は、導電性の布や、硬い部品を折り紙の要領で作った構造などを利用して伸縮性を確保していた。しかし、本当の意味で伸縮自在な電池を作るには、電荷を集める電極や電荷を均衡させる中間電解質層など、すべての部品に伸縮性を与える必要がある。これまでに試作した電池は、伸縮性が中途半端であったり、製造工程が複雑であったり、エネルギー貯蔵容量が限られるなどの問題があった。原因は、電解質層と電極の接続が弱いか、電池の形状が変わると流動電解質が移動して不安定になるなどの理由だ。

これらの課題に対して研究者らは、電解質を2枚の柔軟な電極フィルムの間に融合させたポリマー層に組み込む構造で、完全な固体でありながらも伸縮性のある電池を考案した。

伸縮性電池の電極を作るため、銀ナノワイヤー、カーボンブラック、リチウムベースの正極または負極材料を含む導電性ペーストの薄膜をプレートの上に広げた。次に、コンタクトレンズの素材でもあるポリジメチルシロキサンの層を、ペーストの上に塗布した。このフィルムの上に直接、リチウム塩、高導電性液体、伸縮性ポリマーの原料を加え、光によって活性化すると、これらの成分が結合して元の長さの5000%まで伸び、リチウムイオンを輸送するゴム状の固体の層を形成した。最後に、このスタックの上に別の電極フィルムを載せ、デバイス全体を保護膜で密閉して、伸縮性電池の電極の製作に成功した。

開発した固形伸縮性電池を、従来の液体電解質を使用した同様の装置と比較したところ、固形伸縮性電池は、急速充電レートでの平均充電容量が約6倍で、67回の充放電サイクルの間、より安定した容量を維持した。さらに、固体電極で作った他のプロトタイプでは、ポリマー電解質が1000サイクルにわたって安定した作動を維持した。最初の30サイクルで容量が1%低下したのに対し、比較した液体電解質では16%の低下がみられた。

研究者らは、まだ改良すべき点はあるとしながらも、完全に伸縮可能な固体電池を作るこの新しい方法は、身体に合わせて曲げたり動いたりするウェアラブル機器や埋め込み型機器にとって有望な可能性を秘めていると報告している。

関連情報

Completely stretchy lithium-ion battery for flexible electronics – American Chemical Society

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