極低温下で効率的に熱を電圧に変換できる2Dデバイスを開発

© Alain Herzog

スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)と日本の物質・材料研究機構(NIMS)の研究チームが、宇宙空間よりも低い温度で効率的に熱を電圧に変換できる2Dデバイスを開発した。同技術は、極低温を必要とする量子コンピューティングの進歩に貢献するという。

同研究成果は2024年7月2日、『Nature Nanotechnology』誌に掲載された。

量子コンピューターでは、量子ビットを絶対温度0K(約-273℃)近くのmK(ミリケルビン)領域にまで冷却し、原子の動きを遅くしてノイズを最小限に抑える必要がある。しかし、量子回路を制御する電子部品は熱を発生するため、極低温での熱の除去は困難となる。そのため、現在の技術のほとんどは、量子回路を電子部品から切り離さなければならず、ノイズや非効率の原因となり、研究室の枠を超えた大規模な量子コンピューターの開発を妨げている。

今回開発したデバイスは、優れた電気伝導性を持つグラフェンと半導体特性を持つセレン化インジウムを組み合わせた、シート状の2Dデバイスだ。同デバイスは、磁場が印加されると、温度変化に応じて電圧を発生するネルンスト効果を生じる。

研究チームは、100mKの極低温の冷凍機中で同デバイスを動作させ、レーザーによって温度勾配を作り、動作効率を調べた。その結果、現在使用されている市販デバイスの室温での性能に匹敵する熱電変換効率を観測した。

同研究論文の筆頭著者であるEPFLのGabriele Pasquale氏は、「今回の発見は、mK温度での量子コンピューティングに不可欠な高度な冷却技術の開発につながり、将来の冷却システムに変革をもたらすと信じています」と説明した。

関連情報

A 2D device for quantum cooling

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