3Dプリント製で再利用可能――推力20万ポンドの多段燃焼ロケットエンジンを発表

ロケット推進システムの開発を専門とする米Ursa Majorは2022年6月2日、部品の多くを3Dプリントで作った多段燃焼エンジン「Arroway」を発表した。再利用可能で、アメリカの国家安全保障ミッション、商用衛星の打ち上げ、宇宙ステーションなどへの適応を見込む。Arrowayは既に受注を開始し、初期燃焼試験を2023年、納品を2025年に予定している。

同社はこれまでに、液体酸素/ケロシンを推進剤とする多段燃焼エンジンを開発してきた。推力5000ポンドの「Hadley」は、アメリカ製エンジンとしては初めて燃焼試験をした酸素リッチの多段燃焼エンジンで、現在は初期生産段階にある。また、Hadleyの設計製造手法をもとに、推力を5万ポンドまで拡大した「Ripley」も開発中だ。

新開発のArrowayは推力20万ポンドの多段燃焼エンジンで、推進剤にはHadleyやRipleyとは異なり、液体酸素/メタンを利用している。液体メタン燃料は、ケロシンよりクリーンで、高効率、低コストなだけでなく、再利用しやすいよう、構造に自由度があることから、打ち上げ産業において採用が増えている。また、燃料リッチな多段燃料構造は、高い比推力と推力重量比を提供し、信頼性と長寿命、拡張性の高さも備える。

エンジンの大部分は3Dプリントできるように部品や配置を設計した。これにより、市場のニーズに応じて効率的に生産をスケーリングできると同時に、開発中の迅速なイテレーションを可能にする。また、空中発射や極超音速飛行、軌道上のミッションまで、多彩な用途に対応した柔軟なロケットエンジンを作ってきた実績から、打ち上げまでの期間とコストの削減に貢献する。

何より、Arrowayは数少ない商用国産エンジンのひとつになると期待される。クラスタ化すれば、現在米国で使用禁止となっている、ロシア製エンジン「RD-180」「RD-181」の代替となるだろう。米国宇宙分野は現在、中型および大型の打ち上げ能力を切望している。「Arrowayはアメリカの未来のエンジンだ」と、Ursa Majorの設立者でCEOのJoe Laurienti氏は述べる。

同社は、先進の解析とシミュレーション、3Dプリント技術、独自の合金を利用して、エンジンの設計、テスト、製造を手掛けている。既に50基以上の多段燃焼ロケットエンジンの製造と試験を完了し、そのうち24基を2022年末までに出荷する予定だ。顧客には、米Phantom Spaceや米Stratolaunchといった宇宙関連企業が名を連ね、より速くより確実で、費用対効果の高いロケットの打ち上げを支援する。

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