高い伝導率と許容電流を有する、高配向カーボンナノチューブファイバーの開発

中国科学技術大学の研究チームが、カーボンナノチューブの配向性と密度を高めた、高導電性ファイバーを開発した。同研究成果は2024年7月10日、「Advanced Functional Materials」誌に掲載された。

導電性と軽量性、強度に優れた高性能ファイバーは、さまざまな用途で従来の銅線の代替として必要とされている。炭素原子のみで構成されるカーボンナノチューブ(CNT)は、軽量な高導電性ファイバーの有力材料として期待されている。

CNTファイバーの作製法として、CNTを配向させた液晶溶液を凝固浴槽に注入する湿式紡糸法がある。しかし、同手法で作製したファイバーの電気伝導性と機械特性は、CNTの配向性と密度不足によって、個々のCNTよりも低くなる。また、凝固浴槽の拡散によるクラックも、不規則な細孔を形成して性能を低下させ、実用化を制限している。

研究チームは、上記課題を克服するため、従来から高分子繊維製造に使用されてきた乾湿式紡糸法を、CNTの中でも特に導電性と許容電流の高い二重壁CNTに適用した。乾湿式紡糸法は、凝固液への注入前に空間を設け、空間における事前配向効果により、高分子の配向性を改善し、ファイバーのクラックを減少させる。

作製した二重壁CNTファイバーは、1.1×107S/mという高い伝導率を示した。また、8.0×108A/m2の許容電流と1.65GPaの引張強度を備え、5000回以上の曲げサイクル後も、高い性能を維持する耐久性を示した。

優れた電気特性と機械特性を持つ二重壁CNTファイバーは、次世代の軽量かつ多機能な導電ワイヤーとして期待できる。

関連情報

Highly Conductive Double-Wall Carbon Nanotube Fibers Produced by Dry-Jet Wet Spinning

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る