永電磁石で振動を減衰させる新技術を開発 ウィーン工科大学

オーストリアのウィーン工科大学は2024年7月17日、永電磁石を使った新しい振動減衰技術を開発したと発表した。この技術では電流の継続供給なしで磁力を維持し、電気パルスにより高速で磁化を変化させている。

精密測定において、小さな振動は大きな問題となる。例えば、高性能顕微鏡や精密に調整された望遠鏡ミラーは、人間が感知しないほど小さな振動であっても、その測定結果に影響を受ける場合がある。従来の振動減衰技術には電磁石の磁場を利用する方法があるが、電流を継続的に流さなければ磁力が瞬時に消失してしまう。一方で、永久磁石は一度非常に強い磁場によって磁化されると、外部からのエネルギー供給なしに磁気を維持できる。

そこで、同大学の研究チームは電磁石と永久磁石の利点を組み合わせた永電磁石を使用した振動減衰システムを構築した。この振動減衰システムは、固定された土台と、土台の上で自由に浮動するプラットフォームで構成されている。空中に浮かぶプラットフォームは、強い磁力によってその位置が保たれており、複数の電磁アクチュエーターが1秒未満の速さでプラットフォームの位置を高精度に微調整する。プラットフォームに数kgの荷重を搭載している場合でも、空中でその位置を保つ。

しかし、例えば浮動プラットフォームに搭載された荷重が変わったり、プラットフォームを傾ける必要が生じたりした場合、永久磁石の磁力の強度は適切ではなくなってしまう。その際は、磁石に取り付けたコイルに強い電流パルスを短時間流すと、一瞬だけ非常に強い磁場が発生し、その結果、永電磁石の磁化が変化する。この時、磁気パルスの強度を適切に選ぶことで、その後は再びエネルギー供給を必要とすることなく安定した状態を保持できる。この制御は自動化でき、システムは再磁化が必要かどうかを自動的に認識する。

この技術は、複数のミラーを搭載する大型望遠鏡に最適だ。さまざまな空域に向けられる大型望遠鏡の各ミラーの位置は高精度で調整され、どの位置でも安定した状態を保たなければならないため、この技術は非常に適している。他にも、半導体チップの精密製造や高品質の大型光学機器、実験室ベースの精密測定技術などにも応用できる可能性があるという。

研究チームのGeorg Schitter教授は、「私たちはプロトタイプを使って、非常に正確でエネルギー効率の良い振動抑制が可能であることを示しました」と述べている。

この研究成果は、2024年7月15~18日に開催された国際会議「2024 IEEE/ASME International Conference on Advanced Intelligent Mechatronics(AIM 2024)」で発表された。

関連情報

The magnet trick: New invention makes vibrations disappear | TU Wien

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