二酸化炭素から炭素原子3つで構成されるプロパノールを合成する、新たな分子触媒を開発 豊田中央研究所

豊田中央研究所は2024年9月11日、二酸化炭素(CO2)から炭素原子3つで構成されるアルコールであるプロパノール(C3H7OH)を合成する新たな分子触媒を発表した。CO2を材料にして炭素数3の化合物を合成する世界初の分子触媒で、CO2の有効活用につながる可能性がある。

一酸化炭素(CO)やギ酸(HCOOH)といった炭素原子1つからなる化合物(C1化合物)は、合成物として一般的だが、将来的には複数の炭素原子が結合したエネルギー密度の高い多炭素化合物の合成が期待されている。触媒はこうした化学反応のカギを握っており、触媒の違いで反応速度や合成物の種類を変えられる。

一般的に触媒には無機固体が用いられるが、単分子として作用する分子触媒にも注目が集まっている。しかし、分子触媒は構造が不安定で、反応中に分解されるといった欠点もあり、C3以上の化合物の合成に成功したという報告は世界でも例がなかった。

研究では、CO2からC3化合物であるプロパノールを合成する新たな分子触媒の開発に成功した。炭素原子間の結合を促進する触媒の開発を目指し、いくつかの金属錯体を合成したところ、C3化合物であるプロパノールを合成する分子触媒として、Cuを核とする2つの金属錯体が臭素(Br)元素で架橋された構造を持つ「Br架橋二核Cu(I)錯体(CuBr-4PP)」が機能することを発見した。

CuBr-4PPは、プロパノールだけでなくC2化合物のエタノール(C2H5OH)やエチレン(C2H4)、C1化合物のメタン(CH4)などさまざまな化合物を合成した。現時点では、選択的にプロパノールのみを合成できてはいないが、世界で初めて分子触媒でCO2からC3化合物を合成した。

一定電圧印加時のCuBr-4PPのCO2還元生成物選択性
(縦軸はファラデー効率)

CuBr-4PPの反応メカニズムを検証したところ、CO2電解反応中もCuBr-4PPが分解しなかった。また、「オペランド表面増強ラマン分光分析」により、CO2がどのような中間合成物を経てC3化合物になるのかを突き止めた。一連のメカニズムは、「密度汎関数理論(DFT)」を用いた数理的なシミュレーションによっても裏付けられている。

研究では、世界で初めて分子触媒を用いてCO2からC3化合物を合成できることを実証した。今回発見した分子触媒をベースとした効果的な触媒設計により、C3化合物の選択性向上やさらなる多炭素化合物の合成につながる可能性がある。CO2を有効活用する次世代触媒開発への貢献が期待される。

関連情報

CO2から炭素数3の化合物を合成する分子触媒を開発 ~CO2の高エネルギー物質への再資源化に向けた触媒設計に貢献~ | お知らせ | 株式会社 豊田中央研究所

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