- 2020-3-3
- ニュース, 化学・素材系, 技術ニュース
- エラストマー, シリカ微粒子, ソフトロボット, ユニチカ, 名古屋大学, 架橋高分子, 理化学研究所, 生体材料, 研究, 複合エラストマー, 高度先端医療
名古屋大学は2020年2月28日、理化学研究所およびユニチカと共同で、生体組織を参考にした無色透明で高い靭性を持った複合エラストマー素材を開発したと発表した。
同大学によると、力学特性に優れたさまざまなエラストマーが自動車や飛行機部品、スポーツ用品、精密機械などに活用されている。また今後、高度先進医療やウェアラブルデバイス、ソフトロボットなどの分野において、エラストマーが重要な役割を担うことになり、透明で優れた力学特性を示すエラストマーの開発が重要になるという。
今回開発した複合エラストマーは、生体材料の角膜の構造を倣って生み出されたものだ。無色透明な高分子が低架橋された架橋高分子中に、直径約100nmサイズに粒径を揃えたシリカ微粒子を秩序を有する状態で分散した微細構造を持つ。
シリカ微粒子は、可視光領域で架橋高分子を構成する高分子とは異なる屈折率を持つために高濃度で分散しているが、シリカ微粒子が秩序を持った状態で配列されていることから干渉/相殺されて光学的に無色透明になる。また、今回硬いシリカ微粒子と柔らかい架橋高分子との界面における相互作用によって、複合エラストマーが高い弾性率と伸長性を示すことも発見した。
今回開発した複合エラストマーは透明なために、共焦点顕微鏡観察法などによって、変形時の微細な現象を確認することが可能になる。また、微粒子の単分散性を生かしてX線散乱手法を用いて変形時の微粒子の動的な挙動を詳細に調べることもできるようになる。これらにより、これまで明らかにできなかった複合エラストマーが高靭性化する際のメカニズムが解明され、透明で高靭性のエラストマー調製のための設計指針が確立されることが期待されるという。