- 2024-9-27
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- 2ヒドロキシエチルアクリレート, アメリカ化学会(ACS), ポリ二フッ化ビニリデン, マサチューセッツ大学, 二酸化チタン粒子, 冷却能力, 化学気相成長法, 太陽光, 学術, 布地, 漆喰, 硫酸バリウム粒子, 紫外線, 酸化アルミニウム
米マサチューセッツ大学の研究チームが、伝統的な漆喰に着想を得て、ほとんどの布地に塗布して冷却能力を付与できる、実用的で環境に優しい方法を開発した。
同研究成果は、2024年8月18日~22日に開催されたアメリカ化学会(ACS)の秋季大会で発表された。
紫外線から近赤外線まで含む太陽光を反射して屋外の快適性を高める繊維が、これまでも開発されてきた。例えば、酸化アルミニウムや二酸化チタン粒子を埋め込んだ繊維や、ポリフッ化ビニリデンなどのポリマーを使用した繊維によって光を反射する方法が提案されている。しかし、商業使用目的でこれらの繊維の大規模な製造は、持続可能な方法ではなかった。
そこで、研究チームは、日差しの強い場所で家を涼しく保つために伝統的に使用されている漆喰に着想を得て、天然素材である炭酸カルシウムに生体適合性のある硫酸バリウムを組み合わせた材料を開発した。炭酸カルシウム粒子は可視光線と近赤外線を反射し、硫酸バリウム粒子は紫外線を反射する。同材料の布地への塗布方法には、合成と蒸着を同一工程にする化学気相成長(Chemical Vapor Deposition: CVD)法が採用された。他の方法と比べて少ない工程で市販の繊維に薄いポリマーを塗布できる。
研究チームは、小さな正方形の布に、厚さ5μmの耐久性のあるポリマー(2-ヒドロキシエチルアクリレート)層を塗布し、カルシウムイオンやバリウムイオン、炭酸イオン、硫酸イオンを含む溶液に繰り返し浸した。浸す回数に応じて、粒子はより大きく均一になり、紫外線と近赤外線の両方を反射する直径1~10μmの理想的な大きさに調整できる。
気温32℃を超える晴天の日に実施した屋外試験では、同手法で加工した布地は、未加工の布地と比較して最大8℃の冷却能力を示した。また、洗濯や乾燥による耐久試験において、性能の劣化は観測されなかった。
同技術は、市販のほぼ全ての布地を加工できる。電力を使用せずに冷却できるため、実用的で環境に優しい手法だ。研究チームは現在、商用使用に向けた同手法の大規模化に取り組んでいる。
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Chalk-based coating creates a cooling fabric – American Chemical Society