鋳造とは?特徴から種類、製品例で見る違いなど、丸分かりガイド

街中で見かけるマンホールのふたや消火栓、銅像、寺院の仏像に釣り鐘。これらは鋳造(ちゅうぞう)によって作られています。また、水道の蛇口や各種バルブ、車や船舶のエンジンなども鋳造された製品です。

このように、私たちの身の回りには鋳造製品が多く存在していますが、鋳造技術についてはよく知らない方も多いのではないでしょうか。

この記事では、鋳造の特徴や種類、鍛造との違いなどを解説します。どうぞご覧ください。

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鋳造とは

鋳造とは、高温で溶かした金属を「型」に流し込み、冷やし固めて製品を作る金属加工方法です。複雑な形状であっても低コストで大量に加工できるほか、加工する製品の大きさに制限がありません。

金属を流し込む型を「鋳型(いがた)」と呼び、砂型や金型、樹脂型、石こう型などがあります。鋳造によって作られた製品は「鋳物(いもの)」と呼ばれ、その素材は鉄や鋼、銅合金、アルミニウム合金、チタン合金、マグネシウム合金、亜鉛合金、ニッケル合金など種類が豊富です。

鋳造の歴史は古く、紀元前4000年頃のメソポタミアから始まったとされています。当時は銅や青銅を使って、器や武器、装飾品などが作られていました。紀元前2000年以降は「ふいご」の発明によって、より高温で多くの金属を溶かせるようになり、古代エジプトでは大きな扉なども作られていたようです。

鋳造と鍛造の違い

鋳造とよく比較される金属加工方法が「鍛造(たんぞう)」です。鋳造が高温で金属を液体になるまで溶かすのに対し、鍛造は常温のままか、加熱したとしても柔らかくなる程度までしか熱しません。また、鋳造は型に金属を流し込んで加工しますが、鍛造は型で金属を圧縮したり、ハンマーで叩いたりして加工します。

鍛造は「鍛」という漢字が入っていることからも分かるように、金属を圧縮したり、叩いたりして鍛えることで強度を上げられます。この強度が鍛造の大きなメリットですが、その分加工に時間がかかり、コストも高くなりがちです。

鋳造は金属を型に流し込む際に生じる気泡が原因で、鍛造に比べて強度は低くなります。しかし、低コストで大量生産できるメリットがあります。強度よりもコストを重視して製品を作る場合は、鋳造の方が向いています。

鋳造と、鍛造に関して製品別にみる違い

同じ製品でも、鋳造と鍛造を使い分けています。例として、以下の3点を解説します。

• ゴルフクラブ
• 車のアルミホイール
• ジュエリーリング

それぞれ見ていきましょう。

ゴルフクラブ

鋳造のゴルフクラブは大量生産ができるため、価格を比較的安くできるのが特徴です。また、鋳造は複雑な構造にも対応できるため、バックフェースを大きく削った「ポケットキャビティ」と呼ばれるタイプのアイアンの製造にもよく採用されています。ステンレスなどの硬い素材のゴルフクラブも鋳造で作られます。

鍛造のゴルフクラブは大量生産ができないため、価格が比較的高くなります。また、叩いて加工する鍛造では、軟鉄などの柔らかい素材を使うため、軟鉄鍛造のゴルフクラブは、製品完成後でも体格に合わせてライ角(地面とシャフトの角度)を調整できます。打感や打音などのフィーリングも良いとされています。

車のアルミホイール

鋳造ホイールは、強度を上げるために肉厚を厚くする必要があります。そのため重量が増し、燃費の面ではあまりプラスに働きません。しかし、大量生産できるため、価格を抑えられるほか、デザイン性に優れたホイールを作れます。多くのメーカーが鋳造ホイールを製造しています。

鍛造では、軽量で強度の高いホイールを作れます。しかし、鍛造ホイールの製造は高度な技術や設備を必要とし、量産に向かないため価格が高くなる傾向があります。鍛造ホイールは、高級車や高性能スポーツカー向けの製品が、限られたメーカーによって製造されています。

ジュエリーリング

多くのリングは、大量生産できる鋳造で作られています。価格を抑えられるだけでなく、複雑で繊細なデザインにできるのもメリットです。V字やS字、U字など、ウェーブタイプのリングも作れます。しかし、鋳造リングは強度や硬度が低いため、ゆがみやすかったり、傷つきやすかったりするのが難点です。

鍛造リングは鋳造リングに比べて、強度が約3~5倍以上、硬度が約2倍以上あるとされています。そのため丈夫で傷つきにくく、美しい状態を長く保てます。ただし、デザインはストレートタイプに限定されることが多く、職人が手作りするため、製作期間も長くなります。その分コストが上がり、価格も高くなりがちです。

鋳造の方法

鋳造の方法は、大きく以下の3種類に分けられます。

• 砂型鋳造法
• 金型鋳造法
• 精密鋳造法

その他の鋳造法もあります。それぞれ見ていきましょう。

砂型鋳造法

砂型鋳造法は、鋳物砂による鋳型(砂型)を使う鋳造法です。砂型は製作コストが低く、製作期間も短くできます。ただし、冷却した製品を取り出す際に、砂型を壊さなければなりません。そのため、製品1つ1つに対して砂型を製作する必要があり、製品単価は高くなります。

砂型は冷却スピードが遅く、生産性があまり良くないため、大量生産よりも多品種少量生産に向いています。また、他の鋳造法に比べて寸法精度や機械的性質が劣り、鋳肌(鋳物の表面)も粗くなる傾向があります。しかし、大きな鋳物を製造する際は、砂型鋳造法が最適です。

砂型鋳造法には、鋳物砂を焼成(乾燥)せずに生のまま押し固める「生型鋳造法」、鋳物砂にガスで硬化する粘結剤を混ぜる「ガス硬化性鋳造法」、常温で硬化する鋳物砂を使う「自硬性鋳型鋳造法」などがあります。

金型鋳造法

金型鋳造法は、鋳型に金型を使用する鋳造法です。金型は冷却スピードが速く、何度も繰り返し使えるため大量生産に適しています。金型の製作コストが高いことから、多品種少量生産には向いていません。また、金型に影響が出るため、融点の高い素材も加工できません。

金型鋳造法には「重力金型鋳造法」や「ダイカスト鋳造法」などがあります。

重力金型鋳造法は、溶かした金属を重力のみで鋳型に流し込む方法です。空気が入りにくいため、機械的性質に優れた製品が作れます。

ダイカスト鋳造法は、溶かした金属を鋳型に高速、高圧で流し込む方法です。生産性が高いため、製品単価を抑えられます。しかし、空気が入りやすく、強度が低くなる場合があります。

精密鋳造法

精密鋳造法は寸法精度が高く、鋳肌も美しく仕上がります。しかし、鋳型が高額で、イニシャルコストが高くなる傾向にあります。また、大きな鋳物の製造にも向きません。「ロストワックス法」や「シェルモールド法」などがあります。

ロストワックス法の中でも、一般的に工業用途で用いられているのは「セラミックシェルモールド法」です。まずワックス(ろう)で模型を作り、その模型をセラミックでコーティングします。その後、加熱してワックスを溶かすことで、鋳型が完成します。

シェルモールド法は、ケイ砂とフェノール樹脂、熱硬化剤を混ぜた鋳物砂を、加熱した金型に接触させ、金型表面で硬化したものを鋳型とする方法です。

その他の鋳造法

他にも「ダイレクトキャスト」「セミロスト」「耐熱シリコン鋳造」など、さまざまな鋳造法があります。

ダイレクトキャストはロストワックス法に似た鋳造法ですが、模型を3Dプリンターで製作したり、手作りしたりします。模型作成用の金型が不要になるため、イニシャルコストや製作期間を削減できます。試作品や一点物など、模型を量産する必要がない場合に有効な鋳造法です。

セミロストもロストワックス法と同様の鋳造法で、粘結剤として安価な水ガラスを使用するため、コストを抑えられます。しかし、高価なエチルシリケートを使用するロストワックス法に比べると、寸法精度や鋳肌の仕上がりに劣る部分があります。

耐熱シリコン鋳造は、鋳型に耐熱シリコンを使用する鋳造法です。ピューターなどの低融点合金を素材として、DIYでパーツやアクセサリーなどを自作する際にも利用されています。

まとめ

鋳造の特徴や種類、鍛造との違いなどを解説しました。

「溶かした金属を型に流し込んで冷やし固める」という鋳造技術は、紀元前4000年頃のメソポタミアから発展し、今もなお金属加工の第一線で活躍し続けています。

要求されるコストや寸法精度、強度、表面粗さに応じて「砂型鋳造法」「金型鋳造法」「精密鋳造法」など、さまざまな鋳造技術が使われています。

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fabcross for エンジニア 編集部

現役エンジニアやエンジニアを目指す学生の皆さんに向けて、日々の業務やキャリア形成に役立つ情報をお届けします。


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